運営スタッフがネット小説大賞応募作品から、気になる作品をピックアップいたします。
原則選考とは無関係ですが、素敵な作品をたくさんの方の目に触れる機会をつくることを目的としています。
ぜひご期待ください。
作品タイトル『ウェズリーが真相に気付く時』
著者名 上津英
黒煙の街ルミリエで、有名な建築家デヴィッドが殺された。
デヴィッドの死後、彼のメイドだったリタは用途不明の鍵を手紙で受け取り大切に預かるよう言われる。…が、同時に孫である人気作家のウェズリーのメイドになるようにも言われてしまう。
デヴィッドの葬式で一瞬会ったウェズリーはぶっきらぼうで感じが悪く、正直好きではなかった。この祖父と孫の仲がどうも良くないらしい。
が。
ある事をきっかけに2人は仮の主従契約を結ぶ事に。そして、2人に鍵を狙う犯人の魔の手が忍び寄る。
何者かに主人を殺されてしまったメイドのリタは、主人の遺言に従い、託された鍵を守ること、そして主人の孫のウェズリーに仕えることを決意します。託された鍵を巡って、リタとウェズリーは主人を殺した犯人から狙われることになり、謎解き要素を含んだミステリーが展開されていきます。
性格に難があるウェズリーに仕えることに抵抗を感じるリタは、ウェズリー自身からも厄介者扱いされてしまいます。
それでも主人の遺言を守るためにめげずに頑張るリタの姿はけなげで、応援したくなるキャラクターです。また、田舎出身のリタが独り言を言う際に、訛りが強く出てしまうところも大変可愛らしいです。さらにウェズリーの意地っ張りで口が悪い一方で、素直になれず言葉を詰まらせてしまう一面も彼というキャラクターを際立たせる魅力的な要素となっています。
ぎくしゃくしていた二人が、主人の死の真相に迫るにつれて次第に打ち解けていく様子も見どころです。二人の関係が恋愛に発展せず、息のあったバディとして終わっている点も興味深く、今後も色んな展開を見せて欲しいと思わせてくれます。
主人の死に関連する陰謀が徐々に明らかになっていく様子や、祖父とウェズリーの家族愛なども描かれ、読み応えのある作品でした。