作品タイトル『異界転生譚 ゴースト・アンド・リリィ』
著者名　長串望

妛原 閠(あけんばら うるう)26歳事務職。趣味はＭＭＯＲＰＧ。あだ名は「幽霊」。ブラック企業で限界社畜としてすり減るばかりの人生に疲れ果てた彼女は、ある朝突然、ゲーム内のキャラクターの体で、しかし見知らぬ異世界に横たわる自分を発見した。　

新たな人生と思って自由気ままに生きていこうと決めた閠は、天真爛漫な現地の少女リリオと巡り会い、その旅に相乗りすることを決める。リリオのお付きの武装メイド、トルンペートとも合流し、三人で冒険屋としての生活が始まった。

武者修行を兼ねて亡き母の故郷を訪ねるリリオの旅は、各地で様々なトラブルに巻き込まれながらも生き生きと賑やかに続く。閠は少女たちに連れられていくうちに、自分の心がゆっくりとではあるが回復しつつあることを感じるのだった。

旅の中で三人は想いを交わし合い、やがてアンバランスな三角形として結ばれる。この旅はどこへ向かうのだろうか。この旅はどこまで続くのだろうか。
三人娘の異世界食い道楽&温泉ツアー時々冒険は続く。

現代社会でブラック企業に勤めるOLだった主人公はすでに生き疲れてしまっているため、転生先の異世界では誰とも関わらず幽霊のように生きていこうと決意します。ですが旅の道中出会った見習い冒険者である少女に惹かれ、こっそり後を着いていくことから始まる少女たちの冒険譚です。

文章力や独特の比喩表現がとてもよく、毎話末尾に用語の解説やキーとなる言葉がまとめられているのも物語をより深くするポイントになっています。

こっそり少女をストーキングする主人公と、その気配を感じつつ幽霊だったら接触しないほうが良いと考えている少女がだんだん距離を縮めていく様子にやきもきしつつ、二人の考え方や性格の違いが表現されている冒頭になっています。

二人が出会う場面は主人公が不意をつかれ獣に襲われそうになるところを、思わず少女が身を挺して守り瀕死になってしまうというドキドキハラハラの盛り上がりシーンです。そこで初めて主人公の戦闘能力の高さが明かされることになるのも今後の展開への橋渡しになっており、読み進めたくなる作品に仕上がっています。