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【WEB小説を学問する】明治大学&一橋大学の先生にインタビュー!

 

 

第12回ネット小説大賞では、明治大学・一橋大学に所属している研究者の皆様からご要望を受け、研究協力をさせていただいております。

本記事では谷口先生、青木先生方にインタビューを実施! 最後には応募者の皆様に、研究にあたってのアンケートを実施しております。

もし良かったらご協力いただけると幸いです。

 

——————先生方の自己紹介をお願いします!

谷口先生:明治大学経営学部の谷口です。私の専門は、広く言うと組織論になります。現在の研究関心は、失敗からチームがどう学習していくのか、ジャンルなどのカテゴリがどう生まれ成長/衰退していくのか、ポジショニングがどう成果に影響するかといった点にあります。

青木先生:国立にある一橋大学で経営学についての研究をしている青木です。具体的に言えば、YouTubeをはじめとするプラットフォームに注目して研究しています。最近では、オンライン上での効果的なファン対応や、VTuberなど新しい文化が市場化するプロセスを研究し終えたところです。

 

——————研究テーマとして、WEB小説が候補に挙がったきっかけはなんですか?

谷口先生:きっかけは、一緒に研究している青木先生から紹介してもらったことですね。

青木先生:谷口先生から、「新しいカテゴリの誕生」を分析するのに良い題材はないかと相談をうけたとき、たまたま趣味で『本好きの下剋上』を読んでいました。そのとき、「小説家になろう」のサイト上では、”異世界転生”や”悪役令嬢”など新しいカテゴリが続々と誕生していることに気付き、テーマとして提案しました。

 

————――WEB小説を研究テーマにした決め手はありますか?

青木先生: WEB小説の世界も複雑ではあるのですが、基本的には文字(作品)を通して書き手と読み手がやり取りをしつつ新しい世界を作り上げていきます。その意味で、考慮しなければいけない変数が少なく、本質的なメカニズムを解明するためにはピッタリの環境だと思っています。

実際の社会を分析テーマとすると、あまりに複雑な条件が絡み合っているので、人と人とのやり取りやビジネスの背後に存在するメカニズムを明らかにすることは簡単ではないですからね。

 

————――WEB小説が文字だけの世界ということもあって、比較的メカニズムを解明しやすい題材だったということですね。谷口先生はいかがですか?

谷口先生:研究者としての戦略も少しあるのですが、僕自身の考えとして、日本人だからこそできる研究をしたいと思っています。そうなると、WEB小説はうってつけです。

WEB小説は独特で不思議な世界ですよね。例えば、タイトルが長いとか、必ずしも主役が人間じゃないとか、明らかに一般的な小説とは異なる文化/規範が醸成されていますよね。その意味でまず不思議です。

そして、このWEB小説の特徴の一つであるタイトルの妙は、日本語のネイティブでなければ理解できません。自然言語処理など、分析技術の進歩は著しいですが、やはりまだ研究者個人の感覚が大事になる場面が多分に残されています。

そのため、WEB小説は、日本人(日本語ネイティブ)という僕の特性を強みに替えてくれる分析対象なのです。

 

——————たしかに、WEB小説には特有の文化がありますね。それを日本語のネイティブの方だからこそ、研究しやすいと言うのも納得です。

谷口先生:それに加えて、WEB小説の分野は市場として成長を続けています。それは、単に突拍子のない小説が適当に生み出されているわけではなく、読者の心をつかむような、面白く魅力のある小説が創り出され続けている証拠だと思います。

文字だけの世界で、これほどまでに創造的な成果が継続的に産出されるのはなぜか。研究者からすると、これもまた不思議です。そこには、著者様方個人の創造性に加え、その創造性を高める作品間/著者間の競争があるのだと思います。

では、どういう競争が繰り広げられているのか。研究者としては気になってしまいますね。

 

——————競争というと、ランキングやコンテストがパッと頭に浮かびますが、たしかに競争している側面はあるかもしれません。WEB小説の世界で起きている競争のポイントなどについて、わかったことはありましたか?

谷口先生:まだ具体的なことを言えるまで分析が終わっていませんが、メッセージがあるとすれば、「秩序のある奇抜さ」が重要ということですかね。

競争相手が多い中でどう勝ち抜くか(生き残るか)を考えた時、「とにかく目立つ」というのがひとつの戦略のように思えます。

しかし、これまでの分析結果を見る限り、新奇性(奇抜さ)を追求するとしても、とにかく周りが誰もやっていなことをやればいいというわけではなく、ある程度の「秩序」が必要、というメッセージが読み取れます。

 

——————いちコンテストスタッフとしても、何となく感覚値で理解できるものがありますね。こうして分析をしていただいて、改めてそのメッセージが読み取れるというのは面白いです。もう少し詳しく聞きたいですが…。

青木先生:今回の研究については、まだ分析の途中で、結果がはっきりと確認できるまで、あまり詳しくお伝えすることが難しいです。

というのも、化学や物理のような自然科学とは異なり、心理学・社会学・経済学など、人と人とのつながりに基づく世界を研究する社会科学では、情報発信によって世界の法則そのものを変えてしまう可能性があるためです。

 

——————なるほど、WEB小説の世界が変わってしまうかもしれないなら、研究中はお話しできないですよね。 とはいえ応募者さんもこの研究、すごく気になっていると思うのですが、成果については発表の場はありますか?

青木先生:研究を無事終えることが出来たタイミングで、まずは学会や論文といった場で成果発表することになると思います。そこで先輩研究者たちと研究を磨き上げた後、調査協力してくださった皆様方に、よりわかりやすい形で新しい発見を還元したいです。
具体的には、今回のインタビューのような場や書籍での情報発信になると思います。

 

——————研究をしたあとの展望はありますか?

谷口先生:日本企業の競争力が問題視されて久しいですが、日本のコンテンツ(産業)は、グローバルに競争力を持っていると思います。
WEB小説コミュニティを対象にした研究を通じて、日本の競争力の源泉を理解できれば、これからの日本にとって有益な示唆が得られると考えています。

 

——————コンテンツ産業に寄与となると、期待に胸が躍ります。青木先生はいかがでしょうか?

青木先生:もともと私は、日々の生活やビジネスに役立つ経営戦略を発見し、使える形で社会に広めたいとの思いから経営学者の道を選びました。

その意味で、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』のようにストーリー仕立てにして、役立つ知識を皆様に紹介できたらと思っています。
完成したら「小説家になろう」に投稿、ネット小説大賞に応募させてもらえたら最高ですね(笑)。

 

——————それは面白そうです(笑) せっかくこうしたご縁ができたので、先生方と一緒に、なんらかのかたちで昇華して皆さんに還元したいですね!

先生方、ありがとうございました! ただいま研究のため、応募者様の皆様にアンケートをお願いしております。どうかご回答をお願いします↓

 

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ネット小説大賞としては今まで培ってきたノウハウをいかしつつ、そして時には先生たちからもヒントを得ながら、
皆様の作品としっかり向き合っていきたいと思っています。

今後とも、お力添えをいただけますと幸いです。

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