佐倉あめゆ/『悪役令嬢はダンスがしたい 』
第10回ネット小説大賞において『悪役令嬢はダンスがしたい』で
受賞となったしっぽタヌキ先生に独占インタビューを敢行!
前半では『受賞作の見どころ』、後半では『小説を書くときのコツ』などを伺いました!
ぜひ最後まで読んでみてください♪
ある日、自分が悪役であると知ってしまった侯爵家の令嬢。
脇役なんていやだ、と回避のために行動に出る。
そうして始めたダンスが楽しくて……。
うん。ダンスができるならそれでいいか。
悪役顔だけど心の優しい令嬢がぼんやりがんばる話。
――――既に多数の書籍を出されているしっぽタヌキ先生ですが、第 10 回ネット小説大賞にご応募されたきっかけを教えてください。
『小説家になろう』様で投稿を始めたときには、賞の存在を知っていたような記憶があります。
初応募は2017年だったようで一次落ちでした。そこからも毎年応募して一次落ち、二次落ちを繰り返し、2022年の今回、光栄なことに選んでいただけました。
『小説家になろう』様を知っていて、投稿している作家にとっては年に一度の素敵な場なので、毎年応募している方も多いのではないかと思います。
私もデビュー前からずっと応募しており、さらに今回はセカンドチャンス賞があると知り、そちらの部門にも応募したい! と思ったのがきっかけです。
セカンドチャンスとは:第10回ネット小説大賞で創設されたコンテスト特別企画。すでに『小説家になろう』で書籍化されている応募作品を対象に、コミカライズを前提として選考を行うもの。
――――セカンドチャンスは第10回から創設されたので、当企画では初の受賞者ということになりますね。ぜひお気持ちを教えてください!
今回はコミックシナリオ賞のセカンドチャンス賞をいただいたのですが、『悪役令嬢はダンスがしたい』は私のデビュー作になります。
ですので、入賞を知ったときは、デビューが決まった当時の気持ちを思い出しました。うまく表現できないのですが、うれしくて、ありがたくて……自分を認められたような、世界に存在していいと許してもらえたような、そんな感覚です。
そしてデビュー作を担当してくださった編集さんや、イラストを担当してくださった伊藤明十先生に「やったよ!」と言いたいな、と思いました。未熟でうまくできないこともたくさんあったのですが、その作品にもう一度チャンスをいただけたのは、当時の編集さんと伊藤明十先生のおかげだと思ったので……。
あとは今作を好きだと言ってくださった読者様に。私が小説家としてやっていけるのは読んでくれる方がいるからなので、感謝を伝えたいです。
――――タイトル通り、ヒロインが踊る描写がとても魅力的です…!「ダンスが大好きなヒロイン」の着想のきっかけなどがあれば教えてください。
ちょうど悪役令嬢ものが流行り出したころで、私も読者として大好きで、すごく楽しませてもらっていました。
そこで私も書きたくなり、「私なら何がしたいかな?」と考えていたときに「ダンスじゃね?」と思ったことがきっかけです。
悪役令嬢ものの貴族的社会のきらきら感が好きで、社交ダンスができるなんて最高だな、と思いまして。ですので、ダンスシーンを楽しんでもらい、ダンスの魅力が伝わっていたらとても嬉しいです。
――――ちょっと不器用なヒーローとヒロインの恋模様がいじらしいです! 先生にとって、この二人はどんなカップルなのでしょうか?
私にとっての二人は……しがらみがありつつ、それを打ち破ってくれるような、そんなカップルかなと思います。
優しさや思いやり、社会的立場、守りたいもの、やりたいこと。
絡み合って動けなくなることもあるけれど、それでも選んだ道がある。その先で二人が見た景色を、みなさんと一緒に見ることができたら、最高だな、と。
――――いよいよ3月20日に、『コミックライドivy vol.2』からコミック版の配信スタートとなりますね! キャラクターをご覧になったときの感想を教えてください!
佐倉あめゆ先生が新たにキャラクターデザインを起こしてくださいまして、最高にかわいく、そしてかっこよく描いていただいています。
イラストは華があり、体の線がすごくきれいで……! ダンスシーンなど本当に素敵です。最高です。神です。寿命が延びます。
――――今から拝読するのがとても楽しみです……! 『小説家になろう』と、コミカライズ版の違いがあれば教えていただけますでしょうか?
コミカライズでは、ライラックがすごくすごくかわいいです。とても丁寧な描写で、読めばライラックを好きになること間違いなしです。
そして、兄や父、プレーリーたちも、キラキラしていてかっこいいです!
どのキャラクターもより魅力的にイキイキと描いてくださっており、さらにコマ割りや情景などもわかりやすく、世界がすごく鮮やかになっています!
――――最後にファンの皆さんや、本作が気になっている方に向けてのメッセージがあればお願いします!
まずは小説を読んでくださったみなさんにお礼を。本当にありがとうございました。みなさんのおかげで、よたよた歩きのタヌキもこんな場所まで来ることができました。
コミカライズも最高なので、ぜひ楽しんでいただけると嬉しく思います。
また、新たにコミカライズから楽しんでいただけるみなさんには、「ダンスがしたい!」と進んでいくライラックを、一緒に応援していただけると嬉しいです。
――――小説はどんなツールで書かれていますか? また、執筆の環境づくりで工夫されていることも知りたいです!
私はWebエディタ直打ち勢で、プロットや小ネタやほかいろいろもすべて直打ちです。書籍にする際はそれをDLしてワードで加筆修正する方法をとっています。
集中するための環境作りは、こたつとクッションと温かいお茶とチョコレート……でしょうか(冬仕様)。
小説を書くストレスをできるだけ減らして、自分をご機嫌にして、やる気を出させるのが一番ええな、と思います。
――――『小説家になろう』で連載するにあたって、人気連載にするために意識していたことはありますか?
私は書き溜めもできず、毎日更新もできず、定期更新もできない情けない作家です。思い立ったときに書いて、できあがればそのまま更新するため、巷で言われるような努力はまったくできていません……。
その代わり、鼻を利かせます。クンクンクン。これや! という感じです。これじゃないときも多々あります。悲しいです。結果、読者様に支えられているだけなので、ありがとうございます以外に言葉がありません……。本当にありがとうございます。
『小説家になろう』のようなWeb投稿は無料ででき、さらに感想や評価もいただけるとてもありがたい場です。思い立ったらとりあえず書いてみる。企画、実行、評価のサイクルを自分だけで行えて、スパンも短く、無料で何度でも試行できるところが強みかなと思うので、それをやり続けるのがいいのかな、と。
――――執筆に詰まることはありますか?
私は世界でかなり上位に位置する、詰まる作家だという自負があります。
詰まったときは「なんか違う」ときなので、それの答えが見つかるまで、うずくまったり、宇宙と交信したり、もう自分なんかダメやと思ったりして、灰になります。
すると、なぜか突然「書こ」と思って書けるようになるので書きます。私が一番助けてほしいです。
――――きっと、実際に困っても何とか向き合っている作家さんのほうが多いですよね(笑)! 設定を作る際の資料集めなど、どうされていますか?
私は「興味があり、楽しかったこと」を小説にするタイプなので、小説を書くために資料を探すのではなく、「私は〇〇が好きだから○○を書こう」みたいになります。
ですので、最初の時点で割と知識があったり、そもそも興味があって資料が手元にあったりすることが多い気がします。
補足として動画を見たり、webで探したりすることが多いです。
――――好きなことを題材にすると、調べるときに取っ掛かりが多そうですね! 執筆前に、プロットを作成されていますが?
プロットを作るかどうかは「その小説でなにがしたいか」によって決めています。
1. ネタ出し(タイトル、要素、テーマ、キャラクター)
2. 簡易プロット(1にプラスして、あらすじ、キャッチ、大まかな流れを2~5千字ほど)
3. 詳細プロット(1、2にプラスして構成や出来事を本文の流れに沿って詳細に1~2万字ほど)
……というような感じで書いています。
――――プロットのパターンが3つもあるんですね! どのように使い分けられているのでしょうか。
まず短編(~二万字)であればだいたいネタ出しまで。長編だと簡易プロットまでが多いです。
詳細プロットは求められたとき、または緻密なもの、ミステリーなどのトリックが重要なもののときは書きたいなと思っています。
詳細プロットがあると本文はスルスル書けるし、時間もかかりません。……が、決められたレールを歩いているような気分になり、本文を書くことを作業のように感じて、目が死ぬときがあるので、あまり書いてないです。
簡易プロットで大まかなことだけ決めて、あとはそのときの私が「一番おもしろい」と感じたほうを書くようにしています。のちのち困るかもしれないけれど、私が「一番おもしろい」ほうを選び続けたいな、と。
――――たしかに細かいところまで決めちゃうと、「プロットで満足しちゃう」「楽しくない」という作家さんも多い気がします。
ただ、すぐ心変わりするタイプなので、このインタビューが公開されたときには詳細プロットが大好きになっている可能性もあります……(笑)。
――――キャラクターや舞台の設定、話の構成については、執筆前にどれくらいまで細かく決められていますか?
私はあまり細かくないほうだと思います。まずキャラクターは名前、年齢、外見、一言メモぐらいです。
その状態で書いていくと、ここぞというときに「キャラクターが自身のことを語る、秘密を教えてくれる」みたいなことがあり、そうだったのかぁと思って作者も驚きます。そういう瞬間が小説を書いていて楽しいです。
次に話の構成ですが、だいたい起承転結で組み上げるクセ(?)と、だいたいの文量感(?) があるので、執筆前に決めることは全体の文字数です。
例えば「8万字の小説を書こう!」と思うと、起承転結がそれぞれ二万字になればよしなので、そんな感じです。
――――タイトルをつけるときに、意識していることがあれば教えてください!
一目で味が分かること、ですかね……。そして、フックがあること。タイトルを読んだときに「どういうこと?」と気に留めてもらい、中身を知りたくなってもらえたら嬉しいなと思っています。
あとは「センスいいな!」と思った作品のタイトル、キャッチコピーや広告のフレーズなども心にメモして、自分のセンスを磨けたらいいなと思って暮らしています。
――――文章を書かれるときに、意識していること、注意していることはありますか?
今、自分が書いている文章が「ちゃんと物語のおもしろさに寄与してるの?」「なに味にしたいの?」「うざくね?」「いらなくね?」と聞いてみて、「いーや、いる!」と心が言ったものを書いています。
だいたい「いらない」判断になるので、よくしんどくなっています。心よ、「いる」と言ってくれ。
――――伝えたいことがたくさんあるなかでの情報の取捨選択、辛いですよね……! それでは最後に、作家志望の方々や、次回のネット小説大賞応募者にアドバイスをお願いします。
私は『小説家になろう』様を存分に楽しんでいます。
読者として、投稿される小説が本当に楽しくて大好きです。商業的にうまくいっている方もいらっしゃいますが、そうじゃなくても最高な小説があることを私は知っています。
そして、投稿者として、自分の書いたものへの期待とその期待が外れたときの苦しさ、賞に箸にも棒にもかからないつらさ、だれにも見つけてもらえないさみしさ。それもすごくよくわかります。
今回受賞した『悪役令嬢はダンスがしたい』の初投稿は2015年。小説の発売は2018年。コミカライズは2023年です。このよたよたした道が、一緒に創作をするみなさんの道を広げることができていたらいいなぁと思います。
みなさんと一緒にいっぱい書いて、いっぱい残していけたら、うれしいです。
一発逆転も、千年後に語り継がれる1冊も、だれかを救う言葉も、叶えたい夢も。
書いても報われるとは限らないけれど、書かないとなにも始まらない。書いたところから可能性が広がる。そう信じて。
しっぽタヌキ先生先生、この度はロングインタビューをありがとうございました!
3月20日に公開予定のコミカライズ版『悪役令嬢はダンスがしたい』。ぜひチェックしてくださいね!