キコリの異世界譚/イラスト 藤本キシノ
第10回ネット小説大賞において『キコリの異世界譚』で
受賞となった天野ハザマ先生に独占インタビューを敢行!
前半では『受賞作の見どころ』を、後半では『小説を書くときのコツ』などを伺いました!
ぜひ最後まで読んでみてください♪
努力と根性と斧1本で成り上がれ! 異世界転生した少年の最強ファンタジー!
剣と魔法の世界に転生しても、何もなかった。
持っているのは自分が転生者であるという疎外感だけ。
逃げるようにやってきたのは防衛都市ニールゲン。
頼れる財産は斧1本。名乗った名前はキコリ。
何にもないキコリは、それでも命を賭け金にして生きていく。
Amazon『キコリの異世界譚』
――――――――この度は受賞おめでとうございます! すでにたくさんの書籍を出版されている天野先生は、第7回でもネット小説大賞を受賞されていますよね! 第10回ネット小説大賞にご応募されたきっかけを教えてください。
2014年頃……たぶんその頃からだったと思うんですが。小説家になろうに投稿していまして、ネット小説大賞さまの存在は知っておりました。
「これなら戦える」って納得できるものができたら応募しようと思っておりまして、今回はこのような形となりまして本当に有難いです。
――――入賞のお話を聞いた時、どのようなお気持ちでしたか?
慌てましたよね。「え、ほんと⁉」って。コンテストってアイラブユーを投げかけるようなものですから、キュンとしました。
――――わ、その表現すごく素敵です! 受賞作『キコリの異世界譚』の主人公・キコリは、異世界の記憶があることから悪魔憑きと疎まれてしまったことがきっかけで子供ながらに冒険者になります。
大人びている反面とても素直で、冒険者として努力を続けていくキコリは、読者愛される主人公だと思います…! 先生にとって、主人公のキコリはどんなキャラクターでしょうか?
ありがとうございます! そうですね……一言で言うのであれば「生きるのが下手な子」です。
もっと「こうすれば楽に生きられるのに」みたいな道はたくさんあるのに、選べないんです。生きるのがとことん下手で、だからこそ全力で生きています。
そんなキコリをたくさんの方に愛して頂けたらな、と思います!
―――本作ではキコリが武器を強くしたり、魔法を覚えたりと、少しずつ成長する過程が丁寧に描かれていますね。いわゆる「主人公無双」の作品にしなかった理由を伺いたいです…!
ええ、分かってるんです。主人公無双の方がストレスフリーだっていうのは……! けれど、「キコリ」の場合は強くなる理由に多くの人が納得するものを持たせたかったんです。
こう言うと本作の内容を誤解されそうですが、血反吐を吐きそうな過程の果てに強くならざるを得なかった……っていうのは、物凄くキュンとしませんか?
―――――そういう背負っているものがある主人公、良いですよね! 強くならざるを得ないキコリくんのひたむきさには、読者も登場人物も心を動かされてしまいます。本作の着想のきっかけは、なんだったのでしょうか?
今時の主人公らしい華麗で綺麗でスタイリッシュな要素とは程遠い主人公を書きたかったんです。
――――いよいよ第1巻が11月15日に発売予定です。天野先生から、書籍版の第1巻の魅力を教えてください!
受賞コメントをありがとうございました!
このあとの後編では、天野ハザマ先生に、『小説の書き方』をテーマにインタビューしてみましたのでぜひご覧ください!
――――小説はどんなツールで書かれていますか?
基本的にはワードを使っています。慣れたツールだからというのもあるんですが、この辺りは本当に人によるんですよね。自分の使い慣れたものが最強です。
――――集中するための環境づくりなどで、オススメがあれば教えてください。
集中するための環境づくり……ですが、大事なのは無理しないことです。書けない時に書こうとしたって絶対書けないんです。それでも「あえて」というなら、お気に入りのタンブラーを見つけることをお勧めします。何も考えずにゴクリといけるやつがあると、集中を切らさずに書けますよ!
――――天野先生は人気連載中の『金貨1枚で変わる冒険者生活』など、これまでファンタジーを中心にたくさんの作品を書籍化されていますよね!
書籍化するため、なろうで人気連載にするために意識していることはありますか?
自分が愛せるもの、自分が面白いと思えるものを書こうと常に思っています。
それが正解かどうかは私にも分かりませんが、少なくともそれで5年以上はやれてます。
――――天野先生が仰られると説得力があります…! 執筆に詰まったことはありますか? また、もし執筆の工程で苦手なことがございましたら、教えて下さい。
詰まることのない作家なんていないと思っています。苦手……はあまり意識したことは無いのですが、あ、いや。ありました! 描写を「削る」のが苦手ですね。書きすぎるとダメだというのは分かっているので、最近では「本筋に関係ない部分はズバー!」を心掛けています。
――――設定を作る際の資料集めなど、どうされていますか?
写真集などは結構重宝しています。世の中にはファンタジーな景色が思った以上に多いですから……! あとは取材旅行にも行きます。そこからの作品への落とし込みはすごく楽しい作業です!
――――執筆前に、プロットを作成されていますか?
本当に簡単なものになりますが「主人公と周囲の人々の設定」「国と大陸などの設定」「どのような道筋を辿っていくのか」「武器、魔法、文化など」といった項目で作っていきます。プロットに縛られすぎると自縄自縛になるので、本当に間違えてはいけないものだけにしていますね。
――――キャラクター設定について、どれくらいまで細かく決められているのか教えてください。
キャラクター設定は「どんな人物か」だけを最初に設定します。自分が好きになれるキャラクターになるように気をつけてはいます。
――――舞台設定はいかがでしょうか?
舞台設定は……結構過剰に設定しがちですね。主人公がいる大陸と国、通貨に宗教、国同士の関係に人種。あとはギルドや商店、流通などの仕組み。ハッキリ言ってしまえば使うものなんて1割にも満たないんですが、設定しておくと後から必要なキャラがスルリと出てきたりするんです……!
――――物語に出てこないところまで、丁寧に決められているんですね! 話の構成は、事前にある程度決められていますか?
話の構成はプロット段階では簡単に決まっているんですが、ぶっちゃけ毎回大きくズレます。「こっちの方が面白い!」っていうのに流れちゃうんですよね。
――――文章を書かれるときに、意識していること、注意していることはありますか?
読んでいて面白いか、常に自答するようにはしています。私は他の方々と比べると強烈な個性というものに欠けている方なので、クオリティを磨いて武器にしなければならないのです……。
――――ええ、作品からすごい個性を感じますが……! でも自分が面白いと思う作品を書くというのは、大事ですよね。そのほか、作家志望の方々や、次回のネット小説大賞応募者にアドバイスがあればいただけますと嬉しいです!
流行り廃りに文章の作法、その他諸々。いろんなものを学んでおられると思いますが、全部忘れてください。本人が面白いと思える作品こそが最強です。
世の中には私では真似できないような凄いアイデアと技法で作家になった「オンリーワン」を持つ人がたくさんいます。もし「そんなものはない」ということであれば、私のご同類です。情報をたくさん取り入れていくのが武器になります! ……なんですけど。楽しむことを忘れないでほしいです。
天野ハザマ先生、この度はロングインタビューをありがとうございました!
11月15日に刊行される『キコリの異世界譚』。発売を心より楽しみにしております!