気になる作品があれば、ぜひチェックしてみてください!
今回のピックアップ作品
死刑囚、魔法学校にて教鞭を振るう
(著:無道)
【ジャンル】 アクションホラー 【あらすじ】 金木亮は人間として壊れていた。理性を持った怪物である彼は、ある日とうとう逮捕され、死刑判決を受けていた。 【登場人物】 ☆カナキ・タイガ ☆カレン・オルテシア ☆アルティ・リーゼリット ☆フィーナ・トリニティ 死刑の判決が下されても飄々としている序盤の主人公『カナキ・タイガ』のふてぶてしさが魅力的に感じられたのなら、あなたはすでに彼の虜かも知れません。 悪の側から正義側を俯瞰することによって、浮かびあがってくるあやふやな真実もあります。ささやかな日常を守るものならいざ知らず、生き方を強制されるほどの鉄鎖の縛りのような規律が本当に間違っていないのか。そうした演出が随所に描かれていて、ふと、迷ってしまうほどです。 一国の皇女であり、治安維持部隊『カグヤ』にも所属するオルテシアは、通俗的な正しさを、まさに生き様で体現したような女性です。 善良さを演じつつ、欲する力を得るためには手段を選ばないのがカナキです。教師としての表の顔を利用し、オルテシアの側近というべきフィーナに近づいて信頼を得たりと中々に狡猾。それらが丁寧な筆致によって綴られており、心が揺さぶられるエピソードがたくさん詰まっていました。 カナキ単独でこなしていく、どす黒い企みもあれば、時には殺戮仲間と協力し合うことも。 ここまでの繰り返しになってしまいますが、カナキはかなりの(悪)趣味人です。それでいて『好奇心は猫を殺す』を地でいく人物としても描かれていました。作中においても度々ピンチに陥っている愚か者ですが、同時に切れ者で実力者でもあります。追いこまれた際の機転であったり、仲間たちとの連携だったりと、一筋縄ではいかない巧みでずる賢い戦闘アクションが繰り広げられていました。 狙うとき、追われるとき、それぞれのカナキからは別種の躍動感が溢れています。様々な演出が凝らされており、彼が何を思考して動いているのか。まるでその場にいるかのようなリアリティを感じさせてくれることでしょう。血の臭いをかいでしまったような、そんな気分にさせられた瞬間もあります。 キャラクターとして抱えるエネルギーだけでも、小さな舞台では収まりきれないカナキとオルテシアです。周囲に影響を及ぼして、やがて大きく広がっていき、これまでの二人の肩書きをも越えていきます。 ・映画やゲームなどの、クライムアクションが好きな人 ・異色の異世界ものを求めてやまない方 ・ダークサイドな主人公が大好きな人
そこから紆余曲折を経て、現在、魔法学校で教師をしている。
巧みに証拠を消し、学生を監禁しては、拷問をしていた彼だったが、教師になってから三年目の春、その国の天才皇女様が学園に入学してから、彼の学園生活が変わり始める。
従来の学園教師モノを真っ向から否定するアクションホラー、開幕。
今作品の主人公。
死刑判決が下されて脱獄を考えていたカナキは、悪魔の仕業が神の悪戯か、異世界転移の機会を得る。現世でも教師をしていたカナキだが、移った世界でも魔法を扱うセルベス学園で治療を受け持つ養護教諭として過ごしていた。
ただそれは世間を欺くための大嘘。治療とは正反対の、自身の好奇心を満たすための悪行を覆う仮面に過ぎなかった。
善良な教師として周囲から信頼を得つつ、裏では殺人鬼として奔放に生きる。誰が彼を止めるのか、それとも止められないのか。
カナキのライバル的存在。
オルテシア王国第一皇女であり、魔法師として準一級魔法師。また『魔法使い』になる将来が期待される天才児。姿は麗しく、カナキ曰く『天が二物も三物も与えた人』。
『念動』を応用した飛行魔法などを独自で編み出している。何事にも公平だが、唯一貴族だけは反感を抱いており、自分が王位に就いた際には貴族制の撤廃を考えている。
早々に治安維持部隊『カグヤ』に所属することとなり、いかがわしきカナキと敵対する立場となる。
輝ける身だからこそ、背後には漆黒の影が落ちる。それに彼女が王国ごと呑みこまれるか否かは、誰も知る由もない。
セルベス学園に通う二年生。
魔法の腕はイマイチながらも快活な少女。カナキのゼミ生徒である。またカナキと師弟関係を結んでおり、学園内でも何かと人懐っこく絡む。
彼女の存在はまるで太陽のようで、カナキも気に入っている様子。時に遊びに興じたりもする。但しそれが常識的な感性によるものなのかは、カナキ以外には誰もわからない。
セルベス学園に通う一年生。
天才皇女様のお付き。魔法の才能もさることながら、非常に賢い。入学時の試験で知能指数200を叩きだしたと、カナキから告げられた経緯がある。
ある事件の解決に大きく貢献したりと、才能を輝かせる機会を持つ。
カナキに一目置いており、彼のゼミで体術を中心に習っている。
自由という生き方をはき違えたカナキは、非常に悪辣でダークです。だからこそ新鮮な驚きが、彼の言動や行動を通じて伝わってきます。果たしてダークヒーローたり得るかは読者によって大いに違うと思いますが、そう感じる方も多いのではないでしょうか。
カナキとオルテシアの埋め切れぬ狭間には、相反する要素が多分に含まれています。邪悪な快楽と、善良な思想。死刑までに至った犯罪者と、清く真っ直ぐに育ててられてきた尊き身。教師といえど弱き立場の養護教諭と、一生徒の力量をはるかに越えた準一級魔法師。そんな二人が出会ってしまったからには、そこに衝突が起こるのは無理からぬことだと感じさせてくれます。
教員として同僚でもあるセニアは、とても妖艶な女性。趣向のマニアックさはかなりのもので、誘われたのなら逃れるのは難しそうなほど、魅惑的に描かれていました。
仕事として殺人を請け負うマティアスからは、実直さが感じられた次第です。カナキほどの思慮深き悪人が『鬼』と称するほどに、何者も逃れられぬ恐怖を纏っています。
どうやって突き進んでいくのか。それらはご自身の目で確かめてみては如何でしょうか。