この度は、クラウドゲート株式会社が運営する『第8回ネット小説大賞』にご応募・ご参加いただき誠にありがとうございました。
今回からの試みとなる短編企画賞の応募作と合わせて第8回では10,332作品ものご応募をいただき、その中から、31作品が受賞し、内23作品が商業作品となる運びとなりました。
おめでとうございます!
それでは、第8回ネット小説大賞の最終結果発表をご覧ください!
巨大冒険者ギルド《ギルネリーゼ》の雑用係として働いているティムは戦闘能力が無いにも関わらず立派な冒険者になることを夢見ていた。しかしある日、理不尽な理由でギルドを追放されてしまう。絶望に突き落とされる中、「それなら自分も辞める」と言い出した美少女――ギルドマスターのギルネ様と行方知れずの旅をすることになり……
冒頭の土下座シーンから心を鷲掴みにされました――数多ある作品の中、ここまで潔い良い(ある意味悪い)追放主人公がいたでしょうか? それもそのはずで、蓋を開けると剣も魔法も才能ゼロ。唯一の武器は「雑用スキル」と呼ばれる生活スキルのみ。がんばれ!と手に汗を握り読み進めると、実は彼の清掃・裁縫・料理・洗濯力こそが、巨大ギルドを帝国屈指たらしめていたと徐々に明らかになっていきます。裏方で努力を重ねてきた少年の”真の実力”に、スポットライトが当たっていく過程はまさに痛快。スキルを駆使した独自の戦闘&世直し方法も斬新で、思わず爆笑でした。個性的かつ変態的な一途さを持つヒロインたちも、必見。堂々「金賞」の一作です!
気がつくとベッドの上にいた。勿論知らない天井だ。問題は自分の体だろうか。明らかに小さい。まるで赤ん坊のような体つきだ。というか赤ん坊のようだ。これが俗に言う輪廻転生っていうやつなのかもしれない。なんとか首を動かし周囲を見ると、ガラスのはまっていない木枠の窓があった。外は晴れ晴れとしていてとてもいい天気のようだ。そんな中、1人の女性がこちらに気付きパタパタと走ってくる。きっと私の母親だろうと想像できた。
「おはよう、アウル」
アウルとしての人生が始まったのである
のんべんだらりという、魅惑的な言葉に惹かれて、読み始めたのがこの作品。タイトル通り、現実世界の忙しい毎日を忘れさせてくれるような、ほのぼのとした世界観に虜になりました。少年・アウルが前世の知識を活かして、クッキー、お風呂など様々な物を開発していく姿は、読んでいてほっこりします。また、アウル以外の登場人物もみな優しく、癒しを求める方には是非、手に取ってもらいたい作品です。
とある世界のとある島に存在するささやかな王国。戦う敵もいないのに一丁前に騎士団なんかこしらえちゃって、誰と戦う気なのやら……と思っていたら、やってきたのは魔物という名の野生生物でした。
国民の生活とか自然環境とか色んなものを守るため、今日も豚狩り騎士団(蔑称)所属の平民騎士ヴァルナくんは、アクの強い仲間と共に目下最大の外来危険種「オーク」を撃滅しております。低賃金で。
平民上がりで王国騎士団最強の実力を持つ主人公ヴァルナ。政治や組織による不遇な待遇を受けながらも、癖のある上司や部下、個性的な友人達を巻き込んでは巻き込まれ、共に奔走して行く展開が魅力的。緻密で緊張感のあるバトルシーンの描写と、不遇さを感じさせないコミカルな掛け合い、その先で絡み合って行く人間ドラマの深み。読み進める程に世界へと引き込まれる目が離せない作品です。
異世界転移したら愛犬が最強のフェンリルになってしまった!というツカミだけですでに「おっ」となるのですが。読んでみれば、愛犬レオ(♀)が実に可愛らしい!(サイズはビッグになってますが)犬を飼った経験がある方であれば、レオの描写に「ああ、こういう仕草するよなぁ」と誰しもほっこりすることでしょう。もちろん本作の魅力はそれだけではなく。主人公タクミが、右も左もわからない異世界でどう暮らすのか……転移の際に手に入れた一見無意味にも思える能力をどう活かすのか……そういった部分をしっかり描いていて、とても読み応えのある作品です。
「この子の天井はどこにある?」。本作の主人公リティに対してライバルの女の子が抱く感想です。まさに同じ気持ちで作品を読み進めました。冒険者が国の重要ポストにもつけた時代。田舎の村。15歳のリティは両親の反対を受けながらひたすら冒険者になることを夢見ていました。そんな日々が、ひょんなことから英雄パーティに加わったことで一変! しかし待っていたのは地獄のような仕打ちでした。数々の試練に襲われながらも、彼女にとってはどんな困難も最高の冒険へ繋がっている道だったようで……? 小さくて可愛い見た目とは裏腹に、試練をもろともせず、強烈な好奇心と見切りの才能で乗り越えていきます。そのひたむきな姿に魅了され、気づけば彼女を応援していました。ポジティブ少女が冒険者時代のトップに!? この波乱万丈の冒険を見守りたくなること間違いなし!
書き出しから心を持っていかれます。鬱蒼と茂る森に佇む古い私設図書館、明らかに趣味の偏った「奇」蔵書、 そして謎の常連客。舞台設定に物語の気配をもたせる技量が素晴らしいです。 図書館の本の保管方法や書籍修復の技術など、随所に織り込まれた本に関わる豆知識も知的好奇心をくすぐられます。
RPGなどでは強力な武器を手に入れるのも楽しみですが、本作の主人公は、武器には目もくれず拳での戦いにこだわる漢。そんな彼が目覚めたのは、18年前の過去とゲームの設定が混ざった世界……。おまけに最強まで高めた拳が使えなときたら、自分ならどうするだろう? そう考えると、純粋でときに無謀に見えるくらい、ひたむきに強さを求める主人公をいつしか応援してしまっています。強い相手と死闘を演じる、バトルが魅力の作品です。
ぶっきらぼうながらも世話焼きな主人公の朝陽。冷たい口調と他者を寄せ付けない雰囲気から、氷の令嬢と呼ばれている冬華。隣に住んでいるとはいえ、関わる機会もなかった二人だが、朝陽のお節介から二人の関係性に変化が……。世話焼きな朝陽が差し伸べる手が、じわりじわりと冬華の心を温め溶かしていく、じれったくも甘酸っぱい遅効性ラブストーリー。冷たさと可愛さで揺れ動く冬華と一歩一歩じっくりと距離が詰まっていく二人の関係性が魅力的な作品です。
知らされていない婚約者からの突然の婚約破棄、しかも次の瞬間にはその双子の兄弟からの求婚! そんなとんだ災難から、下級貴族でありながら市民に愛される歌姫と侯爵令息たちの恋模様が描かれます。たくさんのドキドキが詰まった作品です。
活字でありながら、「死神の絵の具」を読んでいると鮮やかな絵が、色がはっきりと映ります。死神は導きの対価として、死者から好きなものをひとつだけ譲り受けるのですが、なにを貰い受けるかは死神によって様々。「僕」が選んだのは「死者の魂の欠片=記憶の中のひと色」でした。一話目から心がじんとしびれて、涙が出ました。
あなたは余命3年になる代わりに24時間だけ時間を遡れる時計を貰えたとしたら、どうするでしょうか。この物語の主人公である死にたがりの青年は、自分と同じく死にたがりの少女の自殺を時間遡行で“邪魔”しようとしていきます。ふとした思いつきだったその自殺の邪魔は、徐々に彼の中で大きな意味を持つようになっていくのです。自分自身も死にたがっていて、余命を死神に渡してしまったにも関わらず。
青年からすれば何度も少女の自殺を知って時を遡り、少女からすれば何度も奇妙な少年が自殺の邪魔をしてくるのです。ふたりの関係は少しずつ育まれていき、同時に青年の余命も減っていきます。過酷な日常がこの先も続くなら死んでしまったほうがいい……その中で生まれる小さな楽しみが、読者の心も癒やしてくれるでしょう。
国語の授業で習った文学作品は、もう内容は憶えていないかもしれません。そんな文学作品の解説と、学校内で起こるミステリーを組み合わせたのがこの作品。『舞姫』『羅生門』『竹取物語』『山月記』『こころ』と、日本文学作品を扱いつつ、読者も辰巳先生の授業を受けている気分で、これらの作品の奥深さを体験できます。その授業での作品解説が、並行して起こっている学校内の事件とリンクしてくるのがこの作品の面白いところ。辰巳先生にいたずらっぽく迫ってくる、円城という女子生徒との関係も気になる展開になっていきます。文学を通して恋愛や人間関係を描いていく構成のうまさや表現力に作者の力量を感じました。
元公安警察で盲目の探偵・世良と、目を潰したことで世良を驚異的な聴力の探偵にした、悪人しか殺さない殺し屋U。世界観からぐいぐい引き込まれ、伏線も作り込まれており、読み応えのある作品でした。
突然親子関係になってしまったドラゴンと娘が不器用ながらも絆を深めていく今作ですが、ほのぼのとした二人とは対照的に、世界観として貴族のダークな部分が問題点になっているのは非常に上手い構図だと思います。そのギャップこそが読者に二人を応援させたくなる要因となっている。そしてとにかく娘のオリビアが可愛い。その一言に尽きる。健気で努力家の彼女をどうにか幸せにさせたい。いや、私が父親なんだから当然そうさせる。そんな風に思わせる作品でした。
非常に硬派で骨太なファンタジー作品だと感じました。主人公こそ異世界転生で前世の記憶がありますが、仲間たちは兄がいて家を継ぐことができない少年ばかり。そんな、家族から用無しと捨てられた彼らが集まって新たな土地を開拓していく姿は、読んでいて応援したくなります。バートレット(用無し)を名乗る主人公には様々な試練が訪れます。仲間同士で力を合わせて、世知辛い現実の中でどう成り上がっていくか、楽しみな作品です。
「七緒は、どうしたら普通になることができますか」
この物語の主人公である夕子の娘・七尾は、積極奇異型のASDとADHDを併発した発達障害だと診断されます。外見的には普通なのですが、特定のことに強いこだわりを持っていたり、周囲の状況に合わせて行動することが苦手だったり、相手の反応はお構いなしに喋り続けたりしてしまいます。
そんなコミュニケーションに難ありな娘を、夕子はどうにか幼稚園へ入れ“普通の子供”として成長していくことを期待します。けれど七尾はトラブルを起こし、夕子の周りの人間関係もぎくしゃくしていってしまう……。本作は発達の凸凹を持つ娘の子育てを、丁寧でセンシティブな文章で描いていきます。周囲と協調できない七尾を育てることの難しさが嫌というほど伝わってきますし、夕子自身が抱える劣等感や強迫感も見えてくることで、この物語の複雑な凸凹が見えてきます。できることとできないことの差が激しい娘と、それを支える母の心の成長を描いたヒューマンドラマです。
「転生したら没落貴族で、借金まみれ」という詰んだ状況からスタートする本作には、「自由気ままに暮らしたい」「狩りをしたい」「チートな能力がほしい」「成り上がりたい」といった異世界ファンタジー好きの願望がすべて詰め込まれています。爽快な戦闘シーンもあるので、日常生活を忘れて異世界ファンタジーの世界に浸ってみてください。
とにかく登場人物が魅力的です。主人公が教育係となった魔王令嬢たちは、五人が五人ともキャラクター性・特徴・どこが可愛らしいのかをしっかり考えて作られていると感じました。また、一緒に暮らすメイドさんや、かつて主人公が教えていた学院の生徒などの多彩なキャラクターが登場して物語を盛り上げてくれます。最初は主人公を敵視していた魔王令嬢が次第にデレていく姿は、王道ではありますが読んでいてとても可愛らしいです。
登場人物は女神さまと主人公がメインなのに、主人公が「勇者の肋骨」に転生したり「ヤドカリ」に転生したり……。いくつもの異世界で、いくつものよくわからない存在に転生し続けます。めんどくさがりな異世界転生担当の女神さまと、やる気はあるのに斜め上な主人公の軽妙なやりとりも魅力的な、新しい異世界転生作品です。
歴史ファンタジーでは珍しい、近世ヨーロッパのしかもフランスを題材とした作品です。主人公はルイ16世に転生しますが、魔法もチートスキルもなく、ただマリー・アントワネットと幸せに暮らしたいがために、転生前の歴史知識を活かし内政や外交に奮闘します。史実に基づきながらも、主人公が必死にその流れを変えていく展開が素晴らしく、ルイ16世とマリー・アントワネットが今後どうなるのか、フランス革命は回避できるのか、目が離せない作品です。
病弱だった少年がMMORPGに転生する、という王道設定で始まる本作は、読者を驚かせるストーリー構成が魅力的。「ここでそう来たか…!」と唸ることも多く、時には涙をこらえきれないシーンも。主人公アレクや仲間たちの最強具合も痛快ですが、決して万能ではないアレクが悩み、努力し、時に失敗する姿に作品としての奥行きを感じています。
「誰も傷つかないですむ世界」を望んで反乱を起こした少女・エリザ。純粋な願いから始まった戦火が、あらゆる利権・思惑の中で変化し膨張していく様は、『戦記物』らしい骨太な読み応えです。魅力的なキャラクターも多く、今後の展開から目を離せません!
この度は、クラウドゲート株式会社が運営する『第8回ネット小説大賞』にご応募・ご参加いただき誠にありがとうございました。
今回からの試みとなる短編企画賞の応募作と合わせて第8回では10,332作品ものご応募をいただき、その中から、31作品が受賞し、内24作品が商業作品となる運びとなりました。
当コンテスト受賞作品である『異世界居酒屋「のぶ」』や『魔王様、リトライ』を含む、小説家になろう原作小説のアニメ放映がこの1年ほどで一気に増え、これまで以上に広い層へと認知されてきた印象があります。
アニメ化のみに限らず、ゲーム化や舞台化、チャットノベルなどの文字媒体の多方面の展開を受け、今回より始まった『短編企画賞』や『メディアミックス賞』などもあったことから、前回以上に幅の広い魅力的な作品が多く集まった、とても良いコンテスト……
第8回ネット小説大賞
応募数(短編賞含む)10332作品
受賞数(短編、奨励賞含む)31作品
ご参加いただきまして、誠にありがとうございました。
また次回もお楽しみに。