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第7回ネット小説大賞 最終結果発表
【最終選考総評】
この度は、クラウドゲート株式会社が運営する『第7回ネット小説大賞』にご応募・ご参加いただきまして誠にありがとうございました。
今回は『9,376』作品の応募の中から360分の1という狭き門をくぐり抜けて26作品が受賞作品として選出されました。
『小説家になろう』をはじめとするWEB小説から端を発した異世界小説の波が、コミカライズ、アニメ化などを介して、ようやくライトノベルを読まない層にまで浸透してきました。 そんな中、ネット小説大賞も第7回を数え、国内最大級の応募者を誇る小説コンテストとして、『小説家になろう』内のみならず、一般の文芸界でも認知が高まってきた感があります。
応募作品数が1万を越え、大きなインパクトを残した前回コンテストの影響から、普段WEB小説を書かない層や、別の業界で活躍する執筆者なども名乗りを上げ、これまで以上にバラエティー豊かな作品が集まる魅力的なコンテストとなりました。
【ジャンルについて(ファンタジー)】
今回のネット小説大賞の選考では、再びハイファンタジージャンルの作品で素敵な作品が増えた印象です。
その背景には、一時期流行したパーティー追放ものなどの影響もあるかもしれません。
また、異世界転移・転生ものの人気が根強い一方で、昨年よりもローファンタジージャンルの作品に力作が多いように感じました。
「小説家になろう」全体を見ても、ここ数年で現代にダンジョンが出現するローファンタジー作品が定期的にランキング上位に登場しており、定番として確立された感があります。
前回は、キャラクター文芸作品で魅力的なものが増えた一方、ファンタジー作品が少し落ち着いた印象でしたので、一番層の厚いジャンルが再びにぎわうのはいい傾向だと思います。
異世界クラス召喚というテンプレを踏襲していても、独自設定や伏線による謎解き要素などによって読者に「面白い!」と思わせることができれば、より良い結果へと近づくことに繋がるでしょう。
【ジャンルについて(文芸作品)】
ジャンルの多様化が進んでおり、これまで以上にバラエティーに富んだ応募作品の中から、第7回では『青に侵された屋上』『藤倉君のニセ彼女』といった現実世界をベースにした作品が受賞となりました。
第6回グランプリ作品である『帝都メルヒェン探偵録』や、発売後の人気から続巻も刊行予定の『道後温泉 湯築屋』など、前回のコンテストから複数のキャラクター文芸作品が生まれ、その影響からかこれまで以上に力作・意欲作が増えた印象です。
キャラクター小説は読者の年齢層も幅広く、近年の隆盛によって土壌も出来上がってきているので、次回も面白い作品を期待したいと思います。
【ゲーム部門賞について】
書籍化に加えてゲーム化検討という新しい試みとして、第7回に設立した本賞。
ゲームを作成するにあたって必要となる『設定』という要素を重視して選考を進めて参りましたが、今回は残念ながら受賞作品は無しという結果となりました。
ピックアップ作品として選出した「エマニュエル・サーガ ―黄昏の国と救世軍―」をはじめ、重厚な設定を背景として作られた作品や、ゲームとしての拡張性を備えたスケールの大きな作品、新たなジャンルを開拓できそうな意欲的な作品など、検討の俎上に上がったタイトルは数多くありました。
ただ、書籍化と比較して制作予算が何十倍もかかるゲーム化は、選考のハードルが高く、それぞれの個性に加えて、ゲームの制作を決断させるための『あと一押し』が欲しかった…というところが、今回の結果に繋がったのではと思います。
今後もネット小説大賞は、ゲーム化に限らず様々な媒体との連動を図っていきたいと考えています。
【選考を通しての所感】
異世界ファンタジー作品は、書き手の研究心も高く、読者を引き込む構成を意識している作品が多く見られました。
ただ、全体の水準が上がるにつれて、選考通過作品に求められる要素も増えていきます。
他のジャンルよりも主人公のキャラ性や背景が作品の面白さを決める割合が高い異世界ファンタジーだけに、序盤で他作品との差別化を図る工夫をどれだけ明確にするかは、前提条件とも言える状況になってきているかと思います。
複数のレーベルから数多の『なろう書籍化作品』が生まれ、飽和状態とも呼べる環境となっている中で、たった一冊を手に取ってもらうためのアイディアが必要になってきます。それらを作品に詰め込むことは、選考を抜ける大きな武器になるのでは、と思います。
また、今回の最終結果発表での追加受賞としまして、『白豚貴族だったどうしようもない私に前世の記憶が生えた件』が選出されました。誠におめでとうございます。
本来であれば、選考結果をもとに受賞作品を決める流れが適当かと思いますが、『小説家になろう』という応募期間終了後、選考終了後も連載が続く媒体でのコンテストということもあり、一度評価が決定された後に、作品の良さを見直されるケースも発生しえます。
コンテスト結果の如何に関わらず、より良い作品を作り上げる姿勢を続けていただけますと幸いです。
【最後に】
まずは、今回受賞となりました26作品の作者の皆様、誠におめでとうございます。
すでに発売されている作品もございますが、ほとんどの作品はこれから書籍化に向けた作業を進めていく形となるかと思います。
ネット小説の隆盛の影響から『小説家になる』ことのハードルは少々さがっているものの、数年後も本を出し続ける…つまり『小説家であり続ける』ことのハードルは格段に上がっています。
そんな環境下ではありますが、コンテストとしましては、受賞作品が長く愛されるよう、また、受賞された方がこれからも新しい作品を世に出せるよう、販売促進やメディア化の提案など、できる限りのサポートをしていきたいと考えています。
複数の出版社様の協賛のもとで開催される『ネット小説大賞』は、単独出版社によって開催されるコンテストと比較しても受賞へのチャンスが格段に大きいコンテストではありますが、それでも受賞確率は1%にも届きません。
ただ、受賞しなかったからといって選考に漏れたすべての作品が劣っていたかというと、そういう訳ではありません。
時代の流行りや、その年々で求められるジャンルが異なります。さらに言えば、書籍化を行う出版社には、得意なジャンルや人気のあるレーベルなど、それぞれの『形』があり、その形にフィットするか…という部分も、作品を選考するうえでの重要なファクターとなっていることは事実です。
当コンテストでは、書籍化を含めた様々なメディアと連動することで、求められる『形』に多様性を持たせ、『小説』という文化の可能性を広げる試みを進めたいと考えています。
今回は、ご参加まことにありがとうございました。今後ともネット小説大賞をよろしくお願いいたします。