『無能令嬢』ベアトリクス・ボーデンは溺愛される。
ξ˚⊿˚)ξ ただのぎょー
あらすじ
「あなたなんてブライアン様には相応しくない」
ベアトリクスは伯爵家令嬢だが、無能令嬢と呼ばれて他の女子たちから蔑まれている。
それは誰もが持つ魔法の『歯車』を彼女だけが持っていないから。
だが彼女の幼なじみで学園の監督官であるブライアンは彼女に首ったけで……!
蒸気溢れる帝都にて、無能と呼ばれる才女と完璧紳士な青年が描く、恋愛&アクションストーリー!
コメント
馬車に轢かれそうになった伯爵家令嬢・ベアトリクスを庇って、幼馴染のブライアンが瀕死の状態になったという過去の出来事から巻き起こる物語。
この世界にある魔法の力『表裏なき歯車』の設定や、それを持たないベアトリクスが「無能令嬢」と呼ばれるようになった背景まで、世界観がとても丁寧に練られており壮大な物語を感じました。
令嬢が切り裂きジャックを捕まえるといった面白い切り口のシーンもあり、展開の盛り上がりに惹きこまれます。オチも気持ちのいい落としどころで、最後まで読後感が良かったです。
心を縛るXXX
一布
あらすじ
親の虐待から守り切れず最愛の弟を亡くした、村田洋平。
売春をすることでしか自分の価値を見い出せない少女、笹森美咲。
父親に濡れ衣を着せ両親を自殺に追い込んだ警察や司法に強い恨みを持つ、金井秀人。
心に後悔を抱える洋平と、自身に価値を見い出せない美咲、復讐心に囚われる秀人が出会うことで、彼等の人生は大きくその方向を変えてゆく。
これは、過去や自らの生い立ちに心を縛られながら生きる人達の物語り。
コメント
残酷で冷たい社会で、一筋の光を辿るようにもがく、三人の登場人物の悲しさ、愛情を丁寧に描いた、ぐっとくる作品です。
沢山の人に読んでもらい、傍らにある小さな幸せに気づき、弱い力に思いをはせて、考えてほしいです。
ドブネズミの革命 ─虐げられる貧民たちは、自由を求めて下克上する─
ちはやれいめい @『とべない天狗とひなの旅』3/11発売
あらすじ
貧富の差が激しい国イズティハル。
貧民は人にあらず、ドブネズミと呼ばれている。
イズティハルの貧民ファジュルは、恋人ルゥルアと二人で暮らしていた。
貧民は差別され、仕事をまともにもらえない。
パン一つを得ることもままならない日々だったが、王女シャムスと出会ったことをきっかけに変わり始める。
シャムスの望みは『スラムにいる賢王の息子を探し、新たな王にすること』
そして現国王ガーニムもまた賢王の息子を探していた。
王の望みは『政敵である賢王の息子を殺すこと』
賢王の息子を殺すため、国王はスラムに火を放つ。
そしてファジュルは自分こそが賢王の息子なのだと知ることになる。
「戦うことでしか変えられないのなら戦う。俺はルゥやみんなが幸せに暮らせる未来がほしい」
これはドブネズミと呼ばれた王子が、貧民たちの幸せのため玉座を勝ち取りにいく物語。
コメント
国を追われた王子が、現国王に反旗を翻す王道ファンタジー。
スラム街で育った主人公が、反乱軍の核となる人物として立ち上がるシーンはとても格好よく、物語の始まりに期待が高まりました。登場人物の設定が作りこまれており、魅力的で、しっかり差別化されているため混同することがなく読み進めることができます。
展開が大きく速いのですが、地の文がしっかりしているため、物語が地に足のついて一歩ずつ進んでいるテンポ感が好印象でした。
ひよっこ退魔師と聖なる夜
一本梅のの
あらすじ
新人退魔師のルルティーナは、厳しくも優しい先輩セドリックのことが大好き。その先輩から条件付きで「ごほうびをやる」と言われ、ルルティーナははりきるのだけど――何を間違えたのか、うっかり求婚しそうになっちゃった?
これは、恋も仕事も頑張るひよっこ退魔師とそんな彼女に振り回される先輩の、ほのぼの可愛い恋物語。
コメント
戦う女の子が主人公のファンタジー作品。丁寧かつ、ほわっと温かい文章表現。健気で頑張り屋な少女が、憧れの先輩に支えられながらも、自らの努力で困難に打ち勝つ少女小説は世代問わず愛されるものだと思います。クリスマスの時期を舞台に描かれていますが、季節問わずに楽しめる素敵な作品です。
恋人持ちの学園のアイドルと誰にも言えない恋をした。
aoi
あらすじ
俺こと高田颯斗は学園のアイドル小鳥ヶ丘有栖に恋をしていた。
アイドルというあだ名にふさわしいほどに整った容姿、綺麗な言葉遣い、性格、全てに惹かれていた高田颯斗は親友である田辺大智の恋愛相談により失恋する。
そう失恋したはずだった。
交際から数ヶ月を経た2人の様子が次第にギクシャクし始め、高田颯斗は小鳥ヶ丘有栖からヨリを戻す為と称し、偽の浮気の関係を持ちかけられる。
始めは本当に擬似的な浮気の関係だったがお互いに段々と惹かれていく。
コメント
この物語の主人公・高田颯斗は、この学園のアイドルの小鳥ヶ丘有栖に恋をした。しかし、この恋は親友の大智が『有栖先輩が好き』と言う恋愛相談によって失恋してしまう。
だから颯斗は仕方なく大智と有栖先輩の恋を応援し、二人はカップルに。その後、二人の仲がぎくしゃくし始め、大智が『浮気をしているかも』と言うことが判明した。そこで颯斗は有栖先輩に大智と有栖の恋のために「浮気をしない?」と持ちかけられる。
颯斗は元々有栖先輩のことが好きだったからokしたが………この三人の三角関係のお話です!
作者さんの今後の活動を応援しています。
月が太陽に追いつく日まで
笑うヤカン
あらすじ
口下手ゴリラと健気な幼女の恋愛譚
コメント
思っていることをうまく言葉にして伝えることができない不器用な男・ソルラクと、健気な少女のリィン(著者曰く、口下手ゴリラと健気な幼女の恋愛譚)。リィンが『ルーナマルケ』という国を目指して彷徨い、奴隷商に襲われていたところをソルラクに助けられるシーンから物語が始まります。
ソルラクは普段は不器用ですぐに粗野な物言いをするのですが、一人で旅などできない非力なリィンのために世話をやいてやる優しさを見せるときのギャップがよい個性になっており、物語を面白くしています。
旅路では女性読者がほっこり胸キュンするようなシーンが多い中、少女リィンを守るためにソルラクが無刃『カレドヴールフ』で戦闘するシーンなどもあり、物語展開のなかにもファンタジー要素や起伏が盛り込んであってどんどん読み進めてしまう魅力があります。
おかわり! ~お屋敷を追放されたかわいそうな私と料理長は異世界を食べ歩きます!~
安井優
あらすじ
「あなたには、このお屋敷から出ていってもらいます」
十八才のお誕生日を迎えた私、フラン・テオブロマ。
お誕生日サプライズは両親からの追放宣言でした⁉
食べることが大好きなポジティブ全力ハッピーお嬢さまと、巻き込まれたネガティブイケメン料理長が送る、異世界お料理食べ歩き旅!
一話読んだらきっと「おかわり!」したくなる、二人のおいしいファンタジーをお届けします!
十八才のお誕生日を迎えた私は両親による「かわいい子には旅をさせよ! 作戦」という名の武者修行のため、お屋敷を追放されちゃった!
しかも、なぜかお付きの人に選ばれたのはイケメンだけどネガティブな料理長!?
旅のミッションは、たくさんの世界を見て学び、立派なレディになること。
異世界を食べ歩きながら様々な学んでいくことに決めて、私たちのちょっと不思議な二人旅は幕を開けた。
色々なお料理を食べながら、勉強できるなんて最高!
そう思っていたけれど、料理長にはなんだか秘密があるみたい……?
コメント
「次期当主として一人前になるまで旅をしなさい」という両親の方針によって屋敷を追い出されたお嬢様と、そのお供をすることになった屋敷のイケメン料理長が、いろんな土地を巡ってグルメ旅をする物語。
旅する先々の土地や人々、グルメが魅力的に描かれています。描写が丁寧で、まるで登場人物と一緒に新しい街を訪れているかのような高揚感がありました。
料理長が味付けや材料の解説をしつつ、お嬢様が美味しそうに感想(食レポ)を付け加えるスタイルで、この世界の食文化、見た目、料理の味などがしっかり伝わってきます。
作品が気になった方は、異世界グルメの旅をぜひ楽しんでみてください。
「最強」に見限られた落ちこぼれの私が、魔法少女偏差値70のゆるふわ少女に「姉妹になってください!」と求婚されたのですが、何かの間違いですよね?〜魔法少女たちの遺した終戦前史〜
猿渡白雪
あらすじ
2124年。突然、一部の少女に“魔法”が発現した。魔法を発現した“魔法少女”を巡った各国の謀略は最終的に第4次世界大戦に発展するが、その対戦は決着を見ることなく、世界が7つに分かれることによって長い停戦に入った。そのうちの1国「公国」では科学者による魔法少女の利用を徹底するため、偽りの身分制度と情報統制が敷かれることになる。
第4次世界大戦の停戦から80年ほどたったある日。舞台は公国の義姉妹関係に基づく魔法少女育成に定評のある桜泉女学園高等部。そこに通う落ちこぼれ、姫谷白雪は中学2年生までの記憶を失いながらも、漫然と日々をやり過ごしていた。そんな彼女の目の前に、白雪のことを「お姉様」と呼び慕う優等生の少女・夢川由紀が現れた!この出会いをきっかけに、白雪は失っていた記憶・失っていた自分の力に少しずつ目覚め始める。
それと時を同じくして、公国に忍び込んだ若き女テロリスト・レイナは公国、そして世界全体に隠された重大な真実に迫っていくことになる。
全く異なる過去にとらわれ続けてきた3人の少女。その交わるはずのなかった3人の絡まった運命は複数の国家・複数の組織の思惑の中で、世界全体に大きな変革をもたらすことになる。
これは、第4次世界大戦再開直前に「本当の姉妹」「本当の相棒」を求め、もがき続けた少女たちの物語。
コメント
タイトルの軽さとは裏腹にとにかく重厚かつシリアスな話が綴られています。
作者さんとしても思い入れの深い作品のようでいろいろと試行錯誤されている最中のようですから、お勧めするのはどうかとも思いましたが、個人的に応援したいのでピックアップしました。
繰り返しになりますがシリアスで重厚な世界観が好きな方にお勧めしたい作品です。
海のシンバル
久々原仁介
あらすじ
海沿いの街、梶栗郷にひっそりと佇むファッションホテル『ピシナム』は、2019年2月にその歴史に終止符を打った。
ホテルマンとして働いていた青年の磯辺は、ライターの秋山千鶴から『ピシナム』の取材を持ちかけられていた。磯辺は取材を経たのちに、かつてホテルを利用していた女子高校生「R」との出来事を思い返す。
当時、ホテルを訪れる度に風貌の違う男を連れまわすRを、磯辺は次第に気に掛けるようになっていった。2人は顔を合わせることはなく、声を掛け合うこともなく、フロントと部屋を繋ぐ気送管ポストで手紙だけを送り合う。
そして磯辺は文通のなかでRの抱える秘密と孤独に気づき始める……。
コメント
この作品を読み進めていくなかで、心を揺さぶられた読者の方も多いのではないでしょうか。読みやすく綺麗な文章で綴られている作品で、登場人物の心情が繊細に描写されており、読み進めるほど物語に惹きこまれていきます。
主人公が働いているファッションホテルに通う、女子高生の「R」。彼女が語る東日本大震災の記憶と、それを受け止める主人公の心情は、読んでいて何度も胸が締め付けられました。
東日本大震災を経験している、あるいは記憶している私たち読者によっても、主人公と「R」、どちらに感情移入をするのかは異なると思います。その点も踏まえても、非常に考えさせられる作品でした。
ステラマリスが聞こえる
有沢真尋
あらすじ
レストラン「海の星」。料理の腕は抜群のオーナーシェフ、負けん気の強いパティシエ。
そして、つまずきながらも日々経験を積んで仕事に向き合おうとしている接客係。
「海の星」を訪れる人々と四季の料理の物語。
コメント
創作フレンチレストラン海の星のホール係蜷川を中心としたヒューマンドラマ。
人間関係のリアルさや登場人物達の感情の移り変わり、成長の表現が素晴らしいです。章ごとに起こる新たな人間関係や問題、その解決などをコミカルな表現を含めながらテンポよく解決や発展させてくのが読んでて楽しくなります。
空飛ぶ魔女の航空会社〈Flying Witch Aviation Company〉
天見ひつじ
あらすじ
かつて『冬枯れの魔女』として畏れられた魔女は、その力を人を傷つける目的で行使しないと決め、一人の少女に戻った。名をフェル・ヴェルヌと改めた彼女は『トゥール・ヴェルヌ航空会社』の見習い航法士として、ベテラン操縦士のユベール・ラ=トゥールと空を飛ぶ。
魔女のホウキではなく、飛行機に乗って。
コメント
文章が読みやすく丁寧に描写がされています。飛行機にまつわる知識もたくさん盛り込まれていますが、文章が非常にわかりやすいため小難しさがなく、説明が物語にしっかり溶け込んでいます。飛行機についてよく調べられている印象で、かつ世界設定も作りこまれていることから、充実感のある内容で没入感があります。
メインキャラクターのフェルもしっかり設定が練られていて、魅力的に描かれています。『冬枯れの魔女』として大きな魔力を持っている、彼女がなぜ魔法は使わないのか。その理由は後半に進むにつれて徐々に明らかになっていきます。この世界の共通語を流暢に話すことができない彼女のカタコトな言葉も大変可愛らしいですが、母国語で話す時だけは知的な口調になるのが良いギャップです。
今後の執筆活動を心より応援しております。
触れない男と宝石少年
染井吉野
あらすじ
未来の東京では、どこからかやってくる人食いモンスターに対抗するため、ロボット技術が大幅に発展していた。被災地でのみ採掘される宝石で動くアンドロイド「ジュエリードール」は、その技術の最たる物と言えるだろう。
ジュエリードールは日本人に深く愛され、「一人に一台ジュエリードール」と呼ばれる時代になったが、主人公の六男はドールを持たない男である。
彼は人間の姿をしてはいるが、生き物に触れると血を吸い取ってしまう体質の怪物「吸血鬼」だった。生まれ故郷の東京に戻てきた際、捨てられていたサンストーンのジュエリードール、サンズを拾う。
誰も傷つけない存在に、人間になりたいと言う六男に、自分が人間にするとサンズは約束する。
それが、ジュエリードールとしておかしい行動だとは気づきもせずに……
孤独な怪物だった六男はおかしなドールであるサンズを手に入れたことで、未来社会を揺るがす事件の告発劇に巻き込まれて行く。
コメント
モンスターの襲撃により一度崩壊した東京で、宝石で動くアンドロイド「ジュエリードール」を人生の伴侶とする日本人、という仄暗く美しい世界観が良いです。
主人公の「六男」は生き物の血を吸い取ってしまう孤独な男で、彼が拾ったジュエリードールの「サンズ」と共に、人間になることを目標に静かに生きていこうとします。
そんな生活が少しずつ壊れ、六男とサンズの抱える謎が社会を揺るがす事件に繋がっていく物語が魅力です。
天華殿の花職人
橘川芙蓉
あらすじ
落ちぶれ令嬢、杜雨燕は家を守るために後宮づとめをすることになった。それは候国では数少ない「水晶天華」を作れる職人として小さな御殿まで与えられた。
名門門閥貴族だった杜雨燕を嫉妬心から恨みを持っている者をやり過ごし、時には仕返しをしながら後宮生活を送る。
後宮で一番人気の武官、烏明星が夜回りのときに刺客に襲われているところに遭遇する。危ないところを助けた杜雨燕は翌日から烏明星に付き纏われるようになった。
そんなある日秀女試験を受けずに後宮に入内した異民族の姫の腕から皇帝のお手つきになっていない証が消えた。他の妃嬪たちから不義密通の罪を問い詰められる姫を杜雨燕は庇うが……。
コメント
まるで映画を観ているかのような冒頭の候明星と杜雨燕の出会いはサスペンスであり、衝撃的で、印象に残る“出会い”のシーンでした。
杜雨燕のキャラを確立したのが、この候明星を匿ったという善行と、後宮の新人女官を助けたという善行の2つだと思います。
新人女官を助けた際に沈彗の怒気を沈めた『術の込められた靴』の贈り物は、セリフも相まってとてもスマートで、品格のあるものでした。頭が切れて、なおかつ弱い者の味方であるという彼女の、文字から滲み出る強い女性像に惹かれました。
丁寧な言葉選びや、無駄の無い説明描写にも作者様の努力が見て取れます。続きを楽しみにしております。
今後の活動を応援しております。
傾国の魔法少女たち ~「最強」の元妹×ゆるふわ優等生少女がおくる終戦前史~
猿渡白雪
あらすじ
2124年。突然、一部の少女に“魔法”が発現した。魔法を発現した“魔法少女”を巡った各国の謀略は最終的に第4次世界大戦に発展するが、その対戦は決着を見ることなく、世界が7つに分かれることによって長い停戦に入った。そのうちの1国「公国」では科学者による魔法少女の利用を徹底するため、偽りの身分制度と情報統制が敷かれることになる。
第4次世界大戦の停戦から80年ほどたったある日。舞台は公国の義姉妹関係に基づく魔法少女育成に定評のある桜泉女学園高等部。そこに通う落ちこぼれ、姫谷白雪は中学2年生までの記憶を失いながらも、漫然と日々をやり過ごしていた。そんな彼女の目の前に、白雪のことを「お姉様」と呼び慕う優等生の少女・夢川由紀が現れた!この出会いをきっかけに、白雪は失っていた記憶・失っていた自分の力に少しずつ目覚め始める。
それと時を同じくして、公国に忍び込んだ若き女テロリスト・レイナは公国、そして世界全体に隠された重大な真実に迫っていくことになる。
全く異なる過去にとらわれ続けてきた3人の少女。その交わるはずのなかった3人の絡まった運命は複数の国家・複数の組織の思惑の中で、世界全体に大きな変革をもたらすことになる。
これは、第4次世界大戦再開直前に「本当の姉妹」「本当の相棒」を求め、もがき続けた少女たちの物語。
コメント
タイトルの軽さとは裏腹にとにかく重厚かつシリアスな話が綴られています。
作者さんとしても思い入れの深い作品のようでいろいろと試行錯誤されている最中のようですから、お勧めするのはどうかとも思いましたが、個人的に応援したいのでピックアップしました。
繰り返しになりますがシリアスで重厚な世界観が好きな方にお勧めしたい作品です。
竜巫女の詩
アウレア
あらすじ
未だこの大地を力ある約定が覆っていた頃。極北の白美の国に、生贄を求めて龍が舞い降りた。
最も美しい巫女を生贄に、白美の国は千年の隆盛を得た……。
外つ夜の調べ外伝。龍と龍巫女が紡ぐガールズ・ラブファンタジー。
コメント
短編ながらも奥深い世界観から登場人物の心情まで繊細かつ丁寧に描かれていて、読めば読むほどぐいぐい惹き込まれていく、素敵な作品でした。
特にアルトゥーランは具体的には描かれていないところも含め、作中の光景が目に浮かんできた次第です。
夜天の公主が評した彼女の性格が凄く愛おしく感じられたので、幸せなまま天寿を全うできて、自分も嬉しくなりましたね。
夜天の公主も、本気で殺すつもりはなかったとはいえ、イシュファがその剣の前に立ちはだかるシーンには鳥肌が立ちました。長い間アルトゥーランの帰りを待ち続けたのもあって、彼女の強さには格好いいと表現する他ないです。
今後の活動を応援しております。
ばいおろじぃ的な村の奇譚
ノラ博士
あらすじ
世界中に点在する、生物学的に奇妙な村々。
白い女しか居ない村。
男同士で子供が生まれる村。
生きたゾンビが徘徊する村。
妖怪が人間の娘を孕ます村。
仙人と仙人見習いたちの村。
例えばそんな村々を、1人の男が渡り歩き、理解し、考察し、解き明かす。
これは、そんな、一話一村の百物語。
コメント
世界中を旅してまわるマッドサイエンティストによる、生物学的に奇妙な村々にまつわる奇譚集。一話完結のオムニバスみたいな感じです。
小説と記録ノートの合いの子みたいな淡々とした筆致ではありますが、それがまた、少々狂った世界観とドライな科学的アプローチによく合ってるかと思います。
オリハルコンはどんな組成と製法なのか、ファンタジー的な巨樹の家の作り方はどうなのか、キョンシーは死体なのにどうして動くのか。
そんな疑問に、現実の科学と独創的な妄想を絶妙な配合で混ぜたアンサーを提供するその作風は、科学に詳しい人、リアル志向のSF好きな人だけでなく、幅広い人たちの興味をそそりそうです。
竜の子供に生まれました
かもしか
あらすじ
目が覚めると竜の巣にいました。
そういや俺死んだけどココって天国? 地獄!? いいえ、これは転生です。
だからって! 竜の目の前に生まれることってあるぅ!? あ、もしかして俺ドラゴンで生まれたのかな! それなら納得だね! はい人間でした。人間でしたぁ!! じゃあ死ぬじゃん!!!
と思ったけど、この竜人間を食うことせずに、むしろ他の仔竜たちと同じように育ててくれました。
竜の食事って人間の赤ん坊も食べれるんだね。
何度も死にかけながらも、姉のフレア、弟のソラと仲睦まじく成長していきます。
空を飛び、巨大な竜と出会ったり、竜の調査に来た人間と友達になったり、ほのぼの異世界ライフを送っていたら――落ちたあああああああああああああ!
ここは竜の巣、浮遊島! 島から落ちたらそこは空! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ! なんとか無事着地ぃ!!
ホッとしたのも束の間、そこから次々と浮遊大陸で起こる事件に巻き込まれまくります。
マナ石、精霊具、竜騎士、悪龍、亜竜、ヴェルサス、ヴィ・メナス――知らない単語がたくさん出てくる。みんなそれ常識? 俺異世界人だからわからないよ? ってか竜と育っているから人間の常識とか知らねえええええ!
俺は家族と穏やかに暮らしたいだけなんです……。
コメント
竜の生態がよく練られていて、翻弄される主人公が面白かったです。また人間だからこその視点がうまく使われていました。
慕ってくれる竜姉と竜弟が、特にいいですね。微笑ましいやり取りのおかげでとても楽しくて、オリジナリティに溢れています。
母竜が喋れない設定もうまく使われており、それなりの年月を経るまで、謎が維持されていました。そして黒竜王の登場により、物語が大きく動きだした感に溢れています。
人間側の事情も明らかになって、「竜の子供」だと自覚する主人公への期待が膨らみました。続きが楽しみです。
今後の活動を応援しております。
瓢箪の巫女
おかやす
あらすじ
その巫女は、名もなき兵士の慰霊のために、美酒が入った瓢箪を持って現れると言われていた。
コメント
土埃が舞う戦の跡、当たり前に人が死んでいくような世界に、人の死を悼み、死者の魂を慰める美しい巫女がいる。
死に行く者に瓢箪の酒を飲ませてやり、最後の言葉を聞いてやる。
この作品は「瓢箪の巫女」シリーズの1作目、千字に満たない文字数ですが、読後の満足感はずしんと重く、また、心にじわり染みます。
どうしようもない、血で汚れた痛々しい状況の中で交わされる、クスリとして甘やかな男女の会話、悲しいけれどとても優しい作品です。
この1作目だけを読んでも、綺麗に話がまとまっているので十分楽しめます。
が、作品はシリーズになっていますので、ぜひシリーズでお楽しみください!
魔人の国の色んな意味でヤバい女秘書
グレファー
あらすじ
魔人と呼ばれる半魔物の異形の人々が暮らす国アスクラン。長年続いた人間との戦争が終わり、まだ人間が誰一人としていないこの国に、魔王の秘書になるためにやってきた人間の女性ソフィ。
魔王であるリズロウは人間であることからソフィを雇うことに躊躇するが、あまりに有能すぎるため手放すに手放せなくなってしまう。
だが彼女は色んな意味でヤバい素性と、人をいつの間に自分の策略に嵌める悪魔的な知恵を持っており、多くの人を振り回し、そして惹きつけていく。
これは、魔人なんかよりもよっぽど化物な女秘書ソフィの物語である。
コメント
序盤でトシンを助けるエピソードがよくできています。目端の利く人物かと思えばドジな面もあったりと、主人公が魅力的に存分に描かれていました。
魔王による面接でも有能さは発揮されており、スパイ疑惑では探偵物的な楽しみ方もできた次第です。事務仕事だけでなく他もテキパキとこなしていく主人公に驚きを隠せない魔王の様子が愉快でした。素晴らしい演出ですね。
最初は主人公からいいように扱われていたトシンですが、変化していく二人の関係が興味深いです。また主人公の部下としてダグも加わっており、更なる躍進が期待出来そうでした。続きが楽しみです。
今後の活動を応援しております。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される~でも、ケモ耳少女とゆるゆるダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします~
霞 杏檎
あらすじ
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
コメント
落ちこぼれヒーラーのフールは、
役立たずのレッテルを貼られ、ギルドから追放されてしまいます。
その後、フールに助けられた、
けも耳ヒロインのファイター、セシリアは、
フールに隠された、尋常ならざる能力に驚くのでした。
仲間と共に困難なクエストに挑み、友情を深めながら、パーティーの皆で成長していく、とても読み応えがあり、スゴく面白いファンタジーの傑作です。
きちんとした設定を、読者の興味を引くように、上手に構成されているという声を頂いております!
最近増えてきた追放物でも、珍しい体験ができる素晴らしい感動のハイファンタジーを味わう事ができる作品です。
転生令嬢は喋れない
どりーむぼうる
あらすじ
その日は突然訪れた。
おしゃべりな事で有名なロクァース家の令嬢が突然無口になった。
突然の事態に周りは騒然とする。
しかし、その実態は周りが思ったよりも単純明快で複雑なものであった……。
手違いで前世の記憶が甦ったラリアは女神に発言することを禁じられる。
少女は呪いを解くために周りを巻き込み走り出した。
彼女は女神を倒すことができるのか?
無口で煩い傍迷惑な令嬢の物語が始まる。
コメント
あまりにも理不尽かつ独善的な女神で、呆気にとられました。そして喋れなくなった主人公の右往左往ぶりが興味深く、先が気になるフックになっています。
ラフィは名脇役ですね。とても優しくて献身的です。主人公へと寄り添う姿に、何度も目頭が熱くなりました。
主人公が他人に意思を伝えるアイデアを苦労して思いついていましたが、現世の記憶から発想した点がとてもよかったです。女神の裏をかいた形であり、また希望の光が射しこんでいました。元に戻るための魔法の考察エピソードも、よく練られていた印象です。続きを楽しみにしています。
今後の活動を応援しております。
よいこ魔王さまは平穏に生きたい。〜幼女×魔王×ごはん×生存戦略スローライフ!〜
海野イカ
あらすじ
史上最も嫌われたと名高い第67魔王デスタリオラは、勇者との戦いに敗れた後、気づけば辺境伯の娘として生まれ直していた。おかしな役割を押し付けられたものの『魔王』よりは気楽そうだと軽く承諾。おいしいものをいっぱい食べて、ヒトとしての暮らしを平穏にエンジョイしようと固く決意。
……したはずが、襲撃やら逃亡やら戦闘やら何かと忙しく過ごす、元魔王お嬢様のおはなし。
コメント
勇者に倒された魔王さまが数十年後の世界にヒトの令嬢に転生して、平穏なグルメライフを目指すお話。
(挿し絵つき。挿し絵話には♢マークが付いています)
魔王さま超かわいい! 魔王さま(前世)かっこいい!
食レポもシリアス、戦闘シーンでの鬼気迫る描写もすばらしく、情景が色鮮やかに脳内アニメ保管される作品です。おいしそうにおやつを食べる魔王さまかわいい。
ほぼすべての絵がかわいい&かっこいい。(一部流血あり)どちらかというと少女小説寄りの絵です。
前半部分で個人的オススメ絵は。
第一話の表紙絵。第54話「令嬢としての振る舞い 」(【八歳児の悪夢】編)。そして第111話「新しい装いとお出かけの朝 」(【白と赤/コンティエラの街】編)です。
女性主人公の長編ファンタジーを探している方にオススメです。
三日間は、事件に首つっこんだ先で、やっかいごとを二つほど拾ってきたり、すごい過密スケジュールをこなす幼女魔王さま。スローライフはどこに行った?
※流血シーンには前書きに注意書きがあります
勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた
秋月いろは
あらすじ
勇者パーティを追放されたおっさん冒険者ガリウス・ノーザン37歳。
しかし彼を追放した筈のメンバーは実はヤバいほど彼を慕っていて……
テンプレ的な展開を逆手に取ったコメディーファンタジーの連載版です。
コメント
追放モノと思いきや、フラグをへし折ったり冒険したりと自由気ままに行動してるのが面白いですね。ざまぁな展開がない代わりに、コメディとして笑える展開が続いてるのがとても好印象でした。
また追放したパーティ側も実はちゃんとおっさんを気遣っていて、それが第三者視点として彼を眺める側に読者を立たせるのが新鮮でした。彼女達もそれぞれキャラクターとして味が感じられるのもよかったと思います。
文章のテンポもよく、先へと読み進みやすいというのもいいですね。スローライフでのんびりというわけでなく、紆余曲折を経て様々な出会いや冒険にでるというファンタジーらしい魅力も感じられました。
今後の活躍を応援しております。
All be one ! 〜燕の旅路〜
夏野YOU霊
あらすじ
──誰だって、心に夢を持っている。
家出少年のヴァイスは腐れ縁の兄弟弟子、シュヴァルツを連れて旅に出た。
四種の民が暮らす十三の国に別れた世界。目指す先はその中心、神秘と魔法の色濃く残る広大な迷宮。深層を目指していざ冒険! ……の筈がその道のりは困難ばかり?
「アタシは母さんと同じ景色を見てみたい」
「私の給金と生活のためにも早く戻ると言ってください」
「お役に立てると宣言した限り、全力で当たります!」
「連れて行ってくれ! ボクを、未来に!!」
宿屋の娘の暴言シスター、ロートや護衛の騎士様ブラウ、恋に恋する元教祖のロゼ、未来を待ち続ける少女ジルヴァも加え、凸凹コンビの快進撃は留まるところを知らない!
そして出会うのは相性最悪ライバルギルドや街の人々、裏社会組織さらには竜!?
「俺の隣に立つのは、お前じゃないと駄目なんだ!!」
「行ってやるよぉ! ちくしょおぉぉぉぉ──!!」
これは、少年少女が夢を叶え、すべてを一つにするまでの物語。
笑いあり友情ありちょっぴり涙あり、ときたま恋あり!? 胸躍る王道冒険ファンタジー、ここに開幕!
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神の生み出した世界の中央【迷宮】そこに立ちはだかる異形の怪物、神の名を持つ獣たち。それらを乗り越えた先にある「至高の財」それを求めて冒険者が誕生した。
一つのギルドが最奥へ到達するが、彼らは何も語らずに闇に消えた――。
というオープニングの文字が印象に残っています。
登場人物も、「夢」という一つのテーマを持ち、抑揚のある旅をしています。
キャラ文芸としても成り立っており、とても個性的なキャラクターが居ます。
あとは、作者さんの熱量が応援したくなるほど熱い物でした。
作品にかけている情熱を絶やしてほしくないと思いましたから、是非ともこちらの作品をピックアップしていただけないでしょうか?
忖度なしに、一生懸命な作者さんの姿を見ていると、元気が出ます!
地域振興ロボ・タックスティーラー
森崎緩
あらすじ
製鉄の街・高見市の地域振興課で働く平井茉莉。
彼女はある日、先輩の新宮から重大なプロジェクトに招かれる。
「お前にご当地キャラの『中の人』を任せる」
戸惑う平井が連れていかれた先で、対面したご当地キャラはまさかの――。
「……ロボット、ですか?」
二足歩行を可能としたディーゼルエンジン駆動の人型二脚ロボ『タックスティーラー』だった。
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地域密着的だからこその、畳みかけるようなユーモアの数々がいいですね。職人気質なサブキャラたちが、程よいスパイスになっていました。
主人公をロボットに乗せたいがための、新宮による口説き文句のような説得が面白かったです。あわせて勘違いだと懸命に頭の中から振り払おうとする主人公が、とても可愛らしく感じられました。
主人公とロボットが話題になるまでの流れもよく練られており、納得感に溢れています。
ただ〆が綺麗すぎた印象があり、もう一山ぐらい盛りあがりがあれば、よりよくなったかも知れません。虚構とリアリティのうまく入り混じった感が、素晴らしい作品でした。
今後の活動を応援しております。
ききょうくんとなずなさん
Nas
あらすじ
保健室登校の生徒だった僕は、高校一年生の春、ひとりぼっちで過ごす隣の席の女の子と出会う。
彼女が向かった先──それは、立入禁止の屋上だった。立入禁止の向こう側で、僕たちは次第に仲を深め、さまざまな出来事を二人で乗り越えるうちに、次第に恋心が花開いていく。
友達以上、恋人未満。周りが思わず「付き合ってないの?」と聞きたくなる二人と、周りの友人たちが織りなす王道(?)青春ストーリー。
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不登校だった僕と隣の席のどこか影を持つ女の子が出会って始まる、海を漂うような雰囲気のしっとりとした学園もの。ややスピード感に欠けますが些細な日常を切り取ったような地の文は柔らかい文体で読みやすくスラスラと読めます。花言葉をサブタイタイトルに置くのもセンスがありオシャレ。
新しい国王と王妃のままごとのようでいて時々血腥い新婚生活
くる ひなた
あらすじ
戴冠式から一月後。
新しいヴィンセント国王となったウルは、幼馴染ロッツ・フェルデンの一人娘を王妃として城へ召し上げた。
ここに、二十四歳と三歳の年の差夫婦が誕生する。
事情を知る前ヴィンセント国王は、息子のウルが今まで見たこともないほど柔らかな笑みを浮かべ、一つ満足そうに頷いただけだった。
対して、大臣達は突然の国王の結婚と王妃の幼さに騒然となり、社交界は混乱を極めることになる。当然、ロッツは娘の嫁入りに大反対した。
「――殺してやる」
ロッツとは生まれた時からの付き合いであるウルも、真っ赤に充血した目で至近距離から覗き込まれてそう凄まれたのは初めてのことだ。
ところが、彼よりも力のある人物――宰相を務める公爵家当主、つまりロッツの父親がマイリの嫁入りをあっさり承諾してしまった。王家との婚姻で、フェルデン公爵家は今後ますます栄えていくことだろう。
こうして、新しい国王と弱冠三歳の王妃による、ままごとのようでいて時々血腥い新婚生活が始まったのである。
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国王しか知らない秘密の約束の設定がうまく活かされていました。主人公やロッツだけでなく、国全体がマイリに翻弄されていて楽しかったです。また幼き身なのにしっかりとしたマイリはとても可愛らしく、そしてキャラが立っています。
結婚に至った理由を知る主人公と、何も知らない周囲との温度差によって、何度も笑わせて頂きました。子煩悩なロッツや、結婚を迫るオリビアなど、当人が真剣になればなるほど、コメディの度合いが強まって面白いです。
どのような結末に至るのか、続きを楽しみにしています。
今後の活動を応援しております。
邪教徒召喚 ー死を信奉する狂信者は異世界に来てもやっぱり異端ー
ふましー
あらすじ
死を救いとして信奉する青年 須杭謙生(スクイ ケンセイ)、通称スクイは待望していたはずの死亡と同時に異世界への召喚を受けてしまう。召喚した女性から受けた使命はただひとつ、生きたいように生きること。
穏やかな青年に見えるがその実、彼は最強の殺人鬼だった。
異世界でも普通に生きる彼だったがそれだけで異世界を荒らしていく。
元から持っていたチート級の殺人能力と、異世界で得た最強魔法で異世界でもなんなく自分の信仰を貫き、衝突する敵や魔物と戦いの日々。気づけばナイフ売りの商人も、褐色巨乳ギルド嬢も、面倒見のいい凄腕冒険者や、やばい趣味を持つ準悪役令嬢、村を追放された勇者まで彼から目が離せない?
そんな彼らを意に介さず、スクイは今日も戦いに身を投じる。そして死にかけた奴隷の少女を助けて一緒にのんびりお茶でも飲みながら、今日もまた異世界で死の素晴らしさを広めます。
コメント
既存の異世界転移の骨組みを利用しながらも独自の世界観やキャラクター性を遺憾なく発揮している点。
所謂サイコパス主人公で初めは狂気的なシーンが多いものの後にその理由や隠れた優しさも描かれ、はじめのインパクトを損なわずキャラクターが掘り下げられていく。
また生前から戦闘技術があり初めは異世界モノにありがちな無双をしかけるも、通じないとなると策を弄し考えて戦う部分もある。
類を見ない主人公と独特のバトルシーンというテンプレに沿いながら他にない良さを持つ作品。
前々から推していたがあまり読まれていないようなので推薦する。
ゆるキャラはじめました
山下ひよ
あらすじ
私のあだ名は「顔面凶器」。
言葉の通り、笑顔が凶悪なせいで不遇の青春を送り、とうとう八つ目の仕事をクビになった時、新たに紹介された仕事は「ゆるキャラ」でした…。
色々と思うところはあるけれど、顔が見えないなら子どもに泣かれることも不気味がられることもない!
一人前のゆるキャラ目指して頑張ります!
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うまく笑えない主人公にとっての着ぐるみの中は、特別な空間だったのでしょう。アクターとして頑張っているうちに、心のしこりのようなものがほぐれていく。そんな主人公に親しみを覚えました。
また、可愛いもの好きも作品のテーマになっており、それによって一度は離れた二人が引き寄せられています。何かと見栄を張る岬の性格が一貫していたりと、どのキャラクターもぶれることなく活き活きとしていました。
ゆるキャラコンテストへの熱意と、主人公と岬の恋の物語がうまく絡み合い、キャラクターたちが発露する、溢れるほどの想いが強く伝わってきました。
今後の活動を応援しております。
猫アレルギーだったアラサーが異世界転生して猫カフェやったら大繁盛でもふもふスローライフ満喫中です
真霜ナオ
あらすじ
主人公の市村 陽は、どこにでもいるごく普通のサラリーマンだ。
部屋中が猫グッズで溢れるほどの猫好きな陽だが、重度の猫アレルギーであるために、猫に近づくことすら叶わない。
そんな陽の数少ない楽しみのひとつは、仕事帰りに公園で会う、鍵尻尾の黒猫・ヨルとの他愛もない時間だった。
ある時、いつものように仕事帰りに公園へと立ち寄った陽は、不良グループに絡まれるヨルの姿を見つける。
咄嗟にヨルを庇った陽だったが、不良たちから暴行を受けた挙句、アレルギー症状により呼吸ができなくなり意識を失ってしまう。
気がつくと、陽は見知らぬ森の中にいた。そこにはヨルの姿もあった。
懐いてくるヨルに慌てる陽は、ヨルに触れても症状が出ないことに気がつく。
ヨルと共に見知らぬ町に辿り着いた陽だが、その姿を見た住人たちは怯えながら一斉に逃げ出していった。
そこは、猫が「魔獣」として恐れられている世界だったのだ。
この物語は、猫が恐れられる世界の中で猫カフェを開店した主人公が、時に猫のために奔走しながら、猫たちと、そして人々と交流を深めていくお話です。
コメント
猫アレルギーだった主人公が、異世界転生する事で猫アレルギーを克服して猫カフェの経営をするお話です。
始めはカフェの経営が主ですが、二章三章と進むうちに物語が大きく動いて感動のラストを迎えます。
ファンタジーならではの不思議な猫達が多数登場するので、猫好きには是非読んでほしいお話です。
海の青より、空の青
青空野 光
あらすじ
一九九六年、夏。
家庭の事情で、何年か振りに田舎にある母親の実家に行くことになった高校二年生の夏生(なつお)は、あまり乗り気とはいえなかった。
小学生の頃は、夏休みのたびに訪れることを心待ちにしていたのに、自分は何かが変わってしまったのだろうか。
そんな漠然とした戸惑いを抱いたまま、母親に連れられてやってきた田舎の町は、海も山も空も、少年時代に記憶していたままに存在していた。
コメント
かけがえのない青春の日々で紡いだ大切な思い出。それを1つ忘れる毎に大人になってしまうという残酷な現実。数年ぶりに訪れた祖母の家で、思い出を取り戻すことで、その現実に向き合う日常が描かれていると思いました。
夏生と美沙のような関係は憧れてしまいます。でも「午後の海」で志帆が登場してどうなるのかとても続きが気になりました。
細部の描写も共感性が高く、見知らぬアナウンサーが知らない地名の話をして不思議な気持ちになる感覚もわかります。旅行先で天気図を見て、いつもと違う地図だった時にも感じますよね。
この夏生の夏休みですが、この後、どういった日々となるのかとても楽しみです。
今後の活動を応援しております。
魔装乙女は死にきれない
浜能来
あらすじ
「だから、ごめんなさいね。私たちのために、地獄に落ちて」
魔装乙女。不老不死の研究のため、魔獣の核の移植により蘇生された、死にきれない死体たち。
魔獣たちを狩る謎の美少女として持て囃される裏で、彼女たちは主人のために人殺しをする。そうして、彼女たちと同じ悲劇をひたすらに再生産する。
フィアは、そんな自分達のあり方に罪悪を覚えながらも。従うしかなかった、彼女には助けたい人がいたから。
「ちょっとちょっと! アハトのお姉様に気安く話しかけないでもらえます?」
「うわーん! ふぃあ〜! アハトがひどいんだー」
彼女は共に戦うアハトとノインに支えられながら、しかしそれでも、確実に歪みを重ねていく。正義の使者たる教会騎士、唯一彼女の望みを叶える知識を持った主人、フィアの罪の象徴たる魔装乙女。
やがてその心は打ち砕かれ、しかしその中から、フィアは自分を再発見する。たった一人の存在証明のために、この物語は紡がれる。彼女の魔術はたがために。
魔術バトルの醍醐味たる詠唱を、これでもかと詰め込んだ厨二系ダークファンタジー!
コメント
厨二チックなかっこよさが溢れる、骨太のダークファンタジーです!
そうなると、どうしても読み味が重くなる印象があると思いますが、この作品はそれを踏まえた上で、ラノベらしいコメディシーンも外さずに描いています。無闇矢鱈に重いわけではなく、要所要所でずしんと来る感じ。
そんな緩急のついた展開の中でも、確実に様々な要素が積み重なっていって。クライマックスの盛り上がりは必ず心を揺さぶられるものになっています。
心情変化としてのストーリーをガッツリ読みたい人には、本当におすすめの作品です。
なまこ×どりる
ξ˚⊿˚)ξ <ただのぎょー(Gyo¥0-)
あらすじ
「……あまねく地平の彼方より疾く来たれ!使い魔召喚!」
辺境伯令嬢にして縦ロールの髪型も美しい魔術学校4年生のアレクサンドラ、通称アレクサ。彼女は前期試験の最終日、使い魔召喚の授業に臨む。学内でも圧倒的な魔力量を誇る彼女が召喚した使い魔は、竜か!はたまた高位精霊か!
…………うにょうにょ(地面で30cm程の長さの黒い棒状のものが蠢いている)。
「……これは……なまこですわね!」
だがしかし彼女の召喚したなまこはただのなまこではなく……?
「神じゃないですかヤダー!」
なまこが神だったり!
「ふぇぇ。白くてべとべとしますわ……」
なまこに白いモノをかけられたり!
「そんなおぞましい使い魔、王族の配偶者として相応しくない!」
使い魔が理由で婚約破棄されたり!
「決闘ですの!」
なまこと一緒に決闘したり!
これはクロと名付けられたなまこの使い魔と、パワー系ヒロインのアレクサが送る爽快アクション恋愛学園戦記。
よろしくですの!
コメント
世界観の奥深さや緻密さは読んでいて惹き込まれる。それでいて読みにくさや堅苦しさはない。むしろ軽妙洒脱で読みやすく、作品世界に没頭してしまう。
148話で完結しているが、ラストバトルへの流れは秀逸。主人公アレクサンドラと一緒になって心を燃やすことになるだろう。
そして、最後まで読めば、それがまだ世界の一端でしかなかったことを知り、読み直したくなる作品である。あれがまさかの伏線だと!? あの時のあれが実は!? と、何度も驚かせてくれる奥の深い作品である。
怪物と呼ばれる呪われ英雄に嫁いだ亡国の不憫姫ですが、こんなに幸せでいいのでしょうか
遥彼方
あらすじ
アースガルズ国王女のヨルズは、祖国を滅ぼした英雄、氷炎の狼ヴァナルガンドの妻になった。
初夜当日。ヴァナルガンドから、彼の体に巻き付くひも状の黒い痣を見せられる。
これは精霊の力を抑える呪印で、精霊の加護を持つ者同士の婚姻により、互いの力を安定させないと死ぬ。しかし彼は死を受け入れ、ヨルズを形だけの妻として扱うから安心してほしいと言う。
制御できないほどの力を持つゆえに怪物と呼ばれる呪われ英雄と、幼い頃から塔に幽閉されていた亡国の不憫姫の、夫婦になってから始める恋物語。
コメント
主人公ヨルズの立ち位置がよく練られていました。ヨルズを蔑んでいた王が残した言葉や、家族と血族の表現の違いであったりと、序盤で語られていく真実の一つ一つが印象的です。
噂でのヴァナルガンドと、本当の彼とのギャップが丁寧に描写されていました。おかげでヴァナルガンドの魅力が深まっています。またお互いの尊重が恋へと繋がっていく演出がいいですね。強く心に染みた次第です。
食事のエピソード等でヨルズに親近感を覚えたからこそ、後半での戸惑う姿に負けるなと応援したくなりました。最後まで面白かったです。
今後の活動を応援しております。
兎人ちゃんと無人販売所を経営して異世界スローライフを送りたいのだが
アイリスラーメン
あらすじ
大手居酒屋チェーン店で働く瀬兎谷雅輝は、先輩からいじめのようなパワハラを毎日のように受けていた。
さらに接客をすれば迷惑な酔っ払いに絡まれゴミのように扱われていた。
そのことが原因でマサキは人間不信になってしまう。
そんな残酷な日々に耐えられずマサキは退職をすることになる。
仕事を退職してから半年が過ぎた頃、自宅で寝ていたはずのマサキが目を覚ますと異世界の森に転移していた。
異世界転移して右も左もわからないマサキを助けたのは垂れたウサ耳が愛くるしい兎人族の美少女ネージュだ。
ネージュは極度の恥ずかしがり屋な性格だが何故かマサキに対しては普通に会話ができた。
そして不思議なことに人間不信のマサキと恥ずかしがり屋のネージュは意気投合。
その流れから共同生活を始めることに…。
コメント
今流行りの無人販売所と大好きなウサギが合わさった異世界ファンタジーです。
ウサギの要素が強く、個性豊かで可愛い兎人族がたくさんでます。
夢に向かって頑張る主人公たちを応援したくなります。
ヨーロッパ横断自転車旅行に出かけたら女の子の国外脱出を手伝うことになった話
瓜生 久一 / 九一
あらすじ
旅行家だった叔父の遺志をついで東欧へと旅立った少年、太一はひとりの少女に出会う。
彼女はある複雑な事情を抱えていて……。
コメント
作品の冒頭、主人公がヨーロッパ横断自転車旅行を決意するまでの経緯が、静かで美しい文章で描かれており、心惹かれました。
主人公が何を感じ、考え、そしてその行動をとったのかが非常に明快で読みやすく、しかし感情を揺さぶられるほどの味わい深さもあり、読み進めていくほどに、物語が心にしみていきます。
ブダペストで出会った少女が、彼女の置かれた過酷な状況を語る場面や、その後に主人公が選択した行動や言葉は、胸に迫るものがありますね。
続きがとても楽しみです。今後の活動も応援しております。