運営スタッフがネット小説大賞応募作品から、気になる作品をピックアップいたします。
原則選考とは無関係ですが、素敵な作品をたくさんの方の目に触れる機会をつくることを目的としています。
ぜひご期待ください。
作品タイトル『聖杯を満たすは愛の色』
著者名 月夜野桜
聖杯の加護で不老不死となったローズは、呪いで吸血鬼と化した円卓の騎士モルドレッドを追っていた。二十一世紀の現代にて彼の復活を知り、教会の重鎮ガブリエルと調査中。
そんな中、彼女の城に現れたのは、祓魔師候補生フルール。卒業試験で吸血鬼退治に来たという。だが実際の会場は遠く離れた同名の別の城。慌てて去る彼女を心配し教会に問い合わせると、何者かが彼女を狙う陰謀と知る。
急ぎフルールを追ったローズだったが……
聖杯を中心に、アーサー王と円卓の騎士、吸血鬼に神の子の復活と、複数の伝説・伝承を組み上げた伝奇小説。
物語は、祓魔師(エクソシスト)候補生のフルールが、卒業試験として課せられた吸血鬼退治で、試験場所を間違えた上に、吸血鬼だと勘違いして喧嘩を売ってしまったローズと出会うところから始まります。フルールを諭し、本来の試験場所へと促すローズ。しかし、この試験の異様性に気づき、フルールを追いかけることになります。
元気で活発なフルールと、クールで落ち着いているローズという対象的なキャラクターの掛け合いが、物語をテンポよく進めていると感じました。次第に明かされていくフルールの特別な出生や、ローズが人生をかけて追いかけている伝説の吸血鬼の存在が物語の根幹を成しており、これからどのように二人の運命が絡み合っていくのか、冒頭から読者を引き込む仕掛けが多く盛り込まれています。また、ダークファンタジーの雰囲気が漂う一方で、コミカルな要素も多く含まれているため親しみやすさも感じられました。
ビジュアル的な美しさとキャラクターの仕草やセリフの言い回し、そして丁寧な情景描写が相まって、まるで一本の映画を見ているような気分にさせてくれる作品です。