(C)早田 結 (C)黒埼/双葉社
第10回ネット小説大賞において『どクズな家族と別れる方法 天才の姉は実はダメ女。無能と言われた妹は救国の魔導士だった』で受賞となった早田結先生に独占インタビューを敢行!
前半では『受賞作の見どころ』を、後半では『小説を書くときのコツ』などを伺いました!
ぜひ最後まで読んでみてください♪
家族から虐げられていたノエルは、姉に殺されかけたことをきっかけに魔法の才能が芽生え、結界を張れるようになったことで、死を免れた。
彼女は虐待をしてくる家族から逃れるために、奨学金をもらって寮生活をすべく国立学園を受験するが、その入試で披露した“卵に結界を張る”という得意技が、自分の運命を大きく変えることになり……。
厳しい家庭環境の中、めげずに生き抜く令嬢の逆転劇、ここに開幕!
――――このたびは受賞おめでとうございます!
受賞のお話を聞いた時、どのようなお気持ちでしたか?
信じられないという感じでした。実は書籍が刊行された今も、現実感が無くて。
そういう意味では、家族の方がわかりやすく喜んでくれていました。
――――作家活動を始めたのはいつ頃からだったのでしょうか。
20代からです。
――――当時からファンタジーを書かれていたのですか?
執筆をはじめた当初、執筆していたジャンルは童話とエッセイだったんです。
新聞や雑誌に投稿して賞をいただいたり、掲載していただいたりしました。
そういう体験をしちゃったものですから、書くことが辞められなくなったんですね。
書き続けて、賞に出して……を繰り返していて。
ネット小説大賞に応募したのもそういう経緯からでした。
――――『どクズな家族と別れる方法』では、家族から虐待されている少女・ノエルが、自分の足で国立魔法学園に行き、受験するシーンから始まりますよね。その後、ノエルの息子世代のユーシスやルシアンたちまで物語が綿々とつながっていく壮大な異世界恋愛ストーリーです。
――――これから読んでみようと思っている方々に向けて、著者である先生から作品の魅力となるポイントを教えてください。
人に頼らず自分で考えて頑張っていく、主人公・ノエルの姿勢が一番の魅力だと思います。
頑張るとはいっても「無鉄砲」という意味ではなく、いつも必死に考え抜いて行動する頭のよい女の子が、自分で運命を切り開こうとしていく物語になっています。
――――主人公・ノエルは、自分の世界に集中してる主人公で、引き込まれました。一方で、脇役のキャラクターも魅力的ですよね。
そうですね、同時に、脇役が好かれている物語でもあります。ノエル以外の登場人物も、ただカッコいい、ただ完璧ではないんです。作者の欲目かもしれませんが、一生懸命で、でもちょっと抜けていたりする可愛いところがあるキャラクターがいっぱい出てきます。
――――ノエルの姉・ゼラフィも、そういうキャラクターですよね。
思った以上にゼラフィが人気になったのが意外でした。実は、本編よりも番外編のほうが、読者の皆さんの感想を見ると「いい!」って人が多いんです。
――――私も、番外編の、ノエルの姉・ゼラフィのエピソードがとても好きです…!本編ではノエルを苦しめた張本人なわけですが、番外編を読むといつのまにか好きになっていて、驚きました。
ありがとうございます。
――――ノエルの姉・ゼラフィを中心とした番外編の創作過程についてぜひ詳しく教えてください。
この物語では、ゼラフィの親にも問題があることは明らかで、ゼラフィが被害者だった一面もあるのではないかと思いました。
ゼラフィは火の魔法を激しく使う能力を持っていて、そういう激しい力を使う子はどこかで無理をしているからだ、という裏設定のようなものがあって。作者としては、そういう「どこかで無理をしている子」だということを前提に物語をつくっていたので、その種明かしみたいなのを番外編のゼラフィ編ではぜひ入れてみようと思っていましたね。
ゼラフィの正体というか、無理をしていた理由というか、その辺だけはぜひ読者の方にもご理解していただける内容にしようという意図はございました。
――――ゼラフィの真実を、ノエルは手紙で知るわけですが、その際のノエルの反応もリアリティがあるというか……。「お姉ちゃんもつらかったんだね」と許すわけじゃないというのが。
さすがに許しちゃいけないですよね。
許せないけど「理解はした」っていう、そこで留めたんです。
そのほうが自然かなと思ったというのが理由です。
――――本作では「国神の加護」という呪いが国中を覆っていることが次第に明らかになりますが、先生の「呪い」「神様」というモチーフに対する想いをお聞かせ願いたいです。
それは全然意識してなかったんですけど(笑)せっかくファンタジーを書くんですから、神様に守られているような祝福があったり、幸運があったり、そういう優しい世界がいいなと思っていました。
――――その神様が、かなり厳しいと感じる一面もありますね。そこが、本作の面白い点というか、読んでびっくりする点でした。
そうですね、厳しくなってしまいましたね。
「呪い」的な部分に関して言えば、神様が守ってくれて、幸運を与えてくれているわけですから、それを与えられるのは最低限の善良な人間であるべきだと思うんですね。神様に守ってもらってる最低条件というか。
それなのに悪いことをするような人間だったらバチがありますよ、幸運を授けられたんだから応えるような善良な人間じゃなきゃいけないですよ、という考えが私にあって。
それが、作中で神様が厳しいラインを持っているような印象になった理由かもしれませんね。
――――受賞作を始めとして書籍化・コミカライズの勢いが止まらない早田結先生ですが、作家として活躍されている現在と当時で、変わったことがあれば教えてください。
実は、あまり無いんです。下積み時代が長すぎたからかもしれません。
出来上がるたびに応募して没になって……という経験を何度もしてきて。今回、本を出させていただいてとても嬉しいんですけれど、もっと才能があったらもっと早くに本になってたんじゃないかというやるせない気持ちも引きずっているわけですね。
でも今の自分を受け止めて受け入れて生きていこう、と日々思っている最中なんです。
なので、今でも「自分は作家だ」ってあぐらをかく感じじゃないんです。
謙虚に、これからも今まで通りやっていこうと思っています。
――――ご活躍中の先生が、そのように受け止められているのはとても意外ですが、ネトコン受賞が先生の気持ちの糧になれば嬉しいです。最後にファンの皆さんや、本作が気になっている方に向けてのメッセージがあればお願いします。
読者の皆様には、番外編まで読んでいただけたら嬉しいです。
書籍版の方では、大幅に加筆を行いました。本編や番外編の「もっと詳しく知りたい」と思っていただいていた部分を、ガンガン追加で書きましたので、ぜひ読んでほしいなと思っています。
コミカライズも、洲鎌ウルさんの手によって、迫力がある表情と、スピード感が魅力の漫画になっています。ウルさんのイラストの威力をぜひ感じてください。
書籍・コミカライズ、どちらもぜひ最後まで読んでいただければ嬉しいです。
これからも自分や読者の方に恥ずかしくない作品を、創り出していこうと思っています。
受賞作品についてのコメント、ありがとうございました! 続いては小説の書き方についてのインタビューです♪
――――書籍化するため、なろうで人気連載にするために意識していることはありますか?
題名とジャンルと出だしです。
この3つが重要じゃないかなと思っています。
――――詳しく教えてください!
まず題名ですが、題名でポイントが決まりますよね。わかりやすくて人目を惹く題名にしなきゃいけないんですけど、コツは自分でも試行錯誤というか。ランキングで上の方のものをずっと見て参考にするとかもしたことがあります。
――――本作もそうされたのでしょうか?
『どクズ』は、実は違うんです(笑)
『どクズ』のタイトルは内容を圧縮したものになるんですが、家族には「何この題名?」と言われたりしました。
――――タイトルを初めて見たときに、本作はジャンルとしては異世界恋愛に分けられるのでしょうが、「家族」をテーマにした作品なんだなというのが一目でわかってとても惹かれました。特に毒親というか、家族の確執というか。本編を読み、番外編に入り、やっぱり!と感じました。私はドンピシャだ!と思って読んでいました。
じゃあ成功していたんですね。
本当はカッコいい題名が理想なんですけど、インパクトで行きました。
――――ではジャンルについてどのような工夫をされているのか教えてください。
ジャンルでいうと、私は異世界って書きやすいと思っているんです。異世界だったら、自由で夢のある発想が許されるという点もありますし、自分が好きだから、のめりこみやすい。そして人気ジャンルだという点もあります。それに頼っちゃいけないなと思ってそこから脱出しようとはしてるんですけど、たぶんこれからも異世界転生は書いちゃうジャンルですね。読者として読んでいても面白いです。異世界に逃げたい願望があるのかもしれません。
――――インタビューをしていると、好きなジャンルを書いている方が、より著者さんもいきいきする印象があります。
確かに。好きなジャンルだからこそ、他の人の作品読んで、自分だったらこうするのにと思って、自分の作品にぶつけるっていうのはありますよね。
――――それでは、出だしについての工夫を教えてください!
出だしは、インパクトがあるほうがいいと思っていました。ノエルがいじめられている描写は作中で度々あるんですけれど、本当に危険なシーンから物語が始まって、かつ、この悲惨な状況でノエルの魔法の才能が開花したという部分も表現できるので、これでいこうと。
――――冒頭の馬のシーン、とても怖かったです…!
一歩間違えれば死んでいるシーンなので、やりすぎなところもありましたけど、いじめとノエルの才能、両方をここでみせるぞと決めて創りました。
――――シーンをつくるときは事前に意図をしっかり決めて執筆されるのですか?
そんなことはないですね。けっこう本能で書いている部分があるんで、あまり知的には考えないで書いている部分もあります。本来なら頭を使わないといけないわけですけど、好き勝手に書いている部分もありますね。
――――初めて「小説家になろう」に投稿された作品は純文学作品で、以後ローファンタジーから、本作のような異世界恋愛まで様々なジャンルの作品を書かれておられますよね。色んなジャンルに挑戦されることの苦労や、面白さを教えてください。
もともとエッセイ・童話から執筆を始めたので、エッセイの延長に純文学があって、童話の延長にファンタジーがあったという感じですね。
純文学では、現実と物語との食い違いがないように下調べをたくさんしています。
ファンタジーでも、あまりに荒唐無稽だとつじつまが合わなくなると思いますので、いろんな角度から考えるようにしています。
読者さんに、不自然でなく、物語に入り込んでほしいなと思って取り組んでいます。
苦労というよりは、やりがいや面白さと感じています。
――――執筆に詰まったことはありますか?
寝不足だったり、疲れているときは思うようにいかないので、そういうときはしっかり休んで、頭が元気になるのが一番の解決方法かなと思っています。
――――執筆前に、プロットを作成されていますが?作成されているとしたら、執筆前にどのような項目を決めていますか?
作品によってまちまちなんですが、ラスト・プロローグをはっきり決めていて、物語の中盤はぼんやりと作り始めたりすることが、ままあります。
『どクズ~』は、本編はそれなりにちゃんとプロットをつくって仕上げました。
番外編のほうは、ゼラフィやノエルなど、キャラクターの性格を鑑みて、頭の中でいろいろ話を練っているうちにできたエッセンスをどんどん投入していったという感じでした。
――――キャラクター設定や舞台設定ついて、執筆前にどれくらいまで細かく決められているのか教えてください。
キャラ設定に関しては、「こんな感じの子」とイメージを決めてから書き始めています。イメージ先行で考えて、おのずと性格も決まってくるようなキャラクターの作り方をしています。舞台設定は「なんとなくこんな感じ」ぐらいでつくりはじめて、作っているうちに固まっていくって感じです。
――――キャラを考えられてからプロットをつくられるのでしょうか?
プロットとキャラは同時進行で決まっていきます。「こういう感じの物語だから、こういうキャラ」というように、両方が同時に生まれてくる感じですね。
――――ありがとうございます。最後に、作家志望の方々や、次回のネット小説大賞応募者にアドバイスがあればいただけますと嬉しいです。
コンテストに応募するのは緊張もしますし、大変だと思います。
でも自分の作品を応募するという緊張感が、マンネリ化しがちな作品作りに喝を入れるいい機会になるなと思っています。私は応募すること自体が、得難い機会だと感じています。皆さんにとってもきっといい経験になると思いますので、応援しています。
早田結先生、インタビューをありがとうございました!
『どクズな家族と別れる方法 天才の姉は実はダメ女。無能と言われた妹は救国の魔導士だった』を、ぜひチェックしてみてください!
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