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【山田露子先生】受賞インタビュー『ヴェールの聖女 ~醜いと誤解された聖女、イケメン護衛騎士に溺愛される~ 』|受賞作の見どころと『小説の書き方』について

ヴェールの聖女

 鳥飼やすゆき /『ヴェールの聖女 ~醜いと誤解された聖女、イケメン護衛騎士に溺愛される~ 』

 

第10回ネット小説大賞において『ヴェールの聖女 ~醜いと誤解された聖女、イケメン護衛騎士に溺愛される~ 』で
受賞となった山田露子先生に独占インタビューを敢行!

前半では『受賞作の見どころ』、後半では『小説を書くときのコツ』などを伺いました!
ぜひ最後まで読んでみてください♪

    

受賞作品のご紹介

第10回ネット小説大賞小説賞受賞作品!
異世界に転生した大学生の祐奈は、聖女に祭り上げられた上、命がけの旅に出る羽目に!?
しかも顔を隠すようにと渡されたヴェールが誤解を招き、祐奈は醜い聖女の烙印を押されてしまう。
旅の護衛をするラング准将だけには心を許せそうだけれど……。祐奈の波乱の旅がここに始まる!

Amazon『ヴェールの聖女 ~醜いと誤解された聖女、イケメン護衛騎士に溺愛される~

 

 

 

――――山田露子先生、この度は受賞おめでとうございます! 入賞のお話を聞いた時、どのようなお気持ちでしたか?

山田露子先生

ありがとうございます! 「おめでとうございます」と言っていただくと、初めて入賞を知ったときのハッピー感がじんわり蘇ってきます。あの時は嬉しすぎてちょっと踊りましたし、お祝いにお寿司も食べました。

 

――――受賞作の『ヴェールの聖女』では、外見が醜悪だと誤解されたヒロインが、ヴェールを付けて顔を隠したまま話が進んでいきますね。「ヒロインはいつヴェールを取るの……!?」とドキドキしました。

山田露子先生

ドキドキしたと言っていただいて、嬉しいです。
実は、ヴェールを取る、取らないのくだりは、コントや漫才を参考にしていまして。

 

――――えっ! コント……ですか!?

山田露子先生

そうなんですよ~。コントって原則、軸がブレることなく進んでいくから、フォーマット的にすごく優秀だと感じることが多いです。

例えば「絶対に注文どおりのものを提供しないファーストフード店員」というコントがあるとすると、その店員は設定を忠実に守って、あの手この手で客からの要求をかわしていきますよね。

それと同じで、本作は読み手が「ヴェールを取ってほしい」と思ってもなかなかなそれが達成されない、「取りそうなのに、やっぱりヴェールを取らない」というギリギリの攻防を見ていただきたかったんです。

 

――――なるほど、たしかに素顔を見えてしまいそうなシチュエーションになるたびに、焦らされてドキドキします!

山田露子先生

ただ、ヒロインが素顔を見られていないと思っているだけで、実は結構見られちゃっているんですけどね……(笑)。

でも、表向きは「傷ついたヒロインがどうしてもヴェールを取れない」という構図は守り通しているので、ヒーローがひょんなことから素顔を見てしまうというハプニングが効果的に作用して、キュン要素が強まったと思います。

 

――――物語の構想としては、意識されたことはありますか?

山田露子先生

物語自体は「SFの宇宙旅行」を、「地上のロードノベル」に落とし込んでみようというのが着想のきっかけでした。宇宙感は消しているので、こう言われてもピンとこない方が大半かもしれません。

 

――――本作が「異世界恋愛」のジャンルということもあって、ちょっと意外かもしれません。もう少し詳しくお伺いしたいです!

山田露子先生

実はこれまでに書いてきた作品は、「ジャンルミックス」を強く意識しています。人間関係は「異世界恋愛」でも、話の構成は「ミステリー」や「SF」なので、読んだ時に「ちょっと不思議な話だな」という感じがするんじゃないかと。上手く調和させるために、「恋愛」の特性としては王道というか、ヒロインとヒーローは一途に互いを想う関係にしていますが、「ミステリー」や「SF」の特性を強くすることで、展開にサプライズが仕込まれる形になるため、そこは読み手の好みがはっきり分かれるところかもしれません。読書で意表を突かれるのは嫌、という方もいるらしいので。

私は個性を出すため全部のジャンルの要素を濃いまま混ぜてきましたが、どちらかの要素をあえて薄くすると「ラブコメ」らしい軽妙さが出るので、そのほうがより多くの読者に抵抗なく受け入れてもらえる気はしますね。「インパクト」を取るか、「心地良さ」を取るか……難しい二択です。
「ジャンルミックス」は塩梅が難しい点もあるけれど、「ミステリー」につきものの伏線回収を丁寧に行うと、読んだ方に楽しんでいただけるかなと思います。

 

――――たしかに、恋愛的な盛り上がりも魅力的でしたが、散りばめられた謎がきちんと回収されていきますね。

山田露子先生

幸いにも、『ヴェールの聖女』はミックス具合がかなり上手くいった気がしています。「恋愛」「SF」「ミステリー」の要素が全部濃いまま、綺麗に混ざった感じがしました。私的に十分に満足したので、もうジャンルミックスはやめようかなと思っていて。今後は違う話の作り方をしていこうかなと思案中です。

 

――――誠実なラング、フランクなリスキンド、可愛い侍女のカルメリータなど、一緒に旅に出るメンバーがヒロインの心の支えになっていますね。先生がお気に入りのキャラクターは居ますか?

山田露子先生

やっぱりラング准将でしょうか。読者さんからいただいた感想からなんとなく「ラング准将が一番人気なのかな?」という気がしていまして。なので「最後まで作品を引っ張ってくれてありがとう、ラング准将!」という気持ちです。

 

――――ラング准将、私も大好きです! 謙虚なヒロインと、そんな彼女を支えるヒーロー。先生にとって二人はどんなカップルでしょうか?

山田露子先生

作品のメインテーマである「誤解」に振り回される必要があるので、ヒロインはセンシティブな性格にしました。そして、彼女とのバランスを考えたときに、ヒーローは誠意がある常識的な人がいいなと。

どんな人でも、他人からの誤解や悪意に疲れてしまうことってあると思うので、そんなときに誠意がある常識的な人が隣にいたら安心しますよね。この物語のヒロインがヒーローに恋するポイントって、現実世界で多くの人が求めているものとたぶん合致するんじゃないかと思います。

ヒロインの視点を通じてヒーローの振舞いを見てもらうことで、読んだ方に疑似恋愛的なトキメキをお届けできたらいいなと思っていました。

 

――――『小説家になろう』と書籍の違いや、第1巻の魅力を教えてください!

山田露子先生

書籍の魅力はなんといっても鳥飼やすゆき先生が描いてくださったイラストです。……この表紙、ほんとすごすぎません? 中のイラストも全部キラキラしていて眩しいものだから、私はイラスト確認の際、毎度白目になっていました。

小説のほうはキュンな書き下ろしがあります! ラング准将ファンの方はぜひぜひ読んでいただきたいです。ラング准将推しの一冊になっていますので。

 

 

 

――――最後にファンの皆さんや、本作が気になっている方に向けてのメッセージがあればお願いします!

山田露子先生

とにかくイラスト……イラストがすごいので見てくださーい! おでこチューのイラストもあるのですが、見た瞬間に「ふわぁ……!」と感嘆の声が漏れました。

表紙とおでこチューのイラスト、表裏に印刷したクリアホルダー欲しいわぁ。「ねぇねぇ、イラストのどれが好き?」って、見た人と語り合いたいですよ。

 

――――みなさん、ぜひイラストの感想も含め、書籍の感想を先生にお送りください(笑)!

 

山田露子先生、受賞コメントをありがとうございました!
このあとの後編では『小説の書き方』を伺っていきます!

 


 

――――執筆前に、プロットを作成されていますが? 作成されているとしたら、執筆前にどのような項目を決めていますか?

山田露子先生

プロットは作成しています。とはいえ、すごくざっくりですね。十万字書くとすると、用紙1~2枚くらいの分量にまとめるので、ほんとおおまかだと思います。

 

――――具体的には、どのように作成されているのでしょうか?

山田露子先生

箇条書きで流れを書き出して、提示する伏線もメモしておきます。あとは「完成時にこうなっているといい」という漠然としたイメージを書いておくことも。「ここでどんでん返し、人生は無常」とか「ここが一番盛り上がるようにする、総力戦」とか。

目指すイメージを書いておくことで、見返したときに最初に作ったプロットの内容よりも良いエピソードが思いつくことが多々あります。

 

――――受賞作では「異世界で言葉が通じる理由」などにも触れられていましたが、そうした細かい設定の裏付けにより、物語にも深みが出ているように感じました。事前に細かく、設定を決められていたのでしょうか?

山田露子先生

事前に細かく考えておく箇所と、書きながら考える箇所と、半々くらいでしょうか。

進め方自体はわりと大雑把だと思います。異世界で言葉が通じる理由については即興で考えたんですけど、いくつか案を挙げた中から一番しっくりくる設定にしました。「ヴェールの聖女」は「西の果てに聖典を取りに行く」という話ですから、「聖典」というアイテムがキーになります。なので言語問題の解決にも「聖典」を一枚噛ませてしまおうと思って。

これにより、あとで似たようなケースが出てきたときに、一貫性を持たせるために、また「聖典」を絡ませることになりました。そうすることで次第に、「聖典」には感情があるかのような、なんともいえない悲哀がじわじわと滲み出てきたんですよね。それが世界観に妙な人間臭さや不条理さを与えてくれたような気がします。

このように段々と形になっていくこともあるので、一度設定を作ったら、その後も機会があれば丁寧に掘り下げるようにしてみると、結果的に話に厚みが出るかもしれませんね。

 

――――文章を書かれるときに、意識していること、注意していることはありますか?

山田露子先生

文章を書く時、小説技法みたいなものはまったく意識していないですね。
創作時は頭の中にずっと映像が流れているので、それをそのまま描写していきます。登場人物が笑っていたら、その表情を見えたまま正確に書く。映像で見えるだけにスルーできなくなっちゃうというか、「このニュアンスは読者に伝えておいたほうがいいよなぁ」という義務感で細部を書いていることも多いです。

 

――――「映像が見える」というのは、素人からするとすごい技術(想像力)だなと思います……!

山田露子先生

あら、そうですか? 想像するのが得意なのは右脳型の特性のようですが、反対に左脳型は、「文章作成が得意」という特性があるらしいので、文を速く書くこともできそうですし、それぞれに良いところがあるような……。

持っている能力は変えようがないですが、特性を理解していると、自分にとって一番楽な書き方ができます。私の場合はそれが右脳を活用したフリートークスタイルなんだと思います。

例えば、買い物に行ったときの出来事を誰かに伝える時、小説で言うところの「神の視点」に近いかたちで語ることがありますよね。
「昨日ある店で、ものすごい天才児を目撃したんだよね。こんな状況で、周囲にはこんな人がいて。たぶんその子供は、一緒にいた父親にすごく腹を立てていたんだと思う」というように、必要な情報を順番に出しながら、口頭で対面の人に説明する。これを記述すると小説に近いものになります。

 

――――フリートークスタイルって、すごくわかりやすい表現ですね……! そのほか、作家志望の方々や、次回のネット小説大賞応募者にアドバイスがあればいただけますと嬉しいです!

山田露子先生

小説を書く前に、ご自身の強みや持ち味を、まずしっかり把握するといいかなと思います。

私の場合ですが、子供からお年寄りまでどんなキャラクターであったとしても、描写する際に苦労したことがないんです。自分より人生経験を積んだ人を書くのって、本来ならとても難しいはずなんですけど、年長者から色々学んだ経験があれば、そんなに背伸びをしなくても書くことができる気がします。

実際のところ私は、小さな頃からお年寄りと話をするのが好きな子供でした。

不思議なしきたりや、言い伝え、ことわざ、昔の混沌とした時代背景など、面白いことをたくさん教えてもらいました。血縁者に限らずお年寄りからよく構われていた気がするので、たぶん可愛がられるタイプだったのでしょうし、私のほうも、自分と違う価値観の人に強く惹きつけられて、相手をリスペクトするところがありました。
そういった実地で学んだことが、今になって、小説に生かされているのかもしれません。

 

――――先生の強みは、子供時代の経験からきているんですね。

山田露子先生

うーん……大人になってもずっと継続している気がするので、もうそういう特性なんですかね。それで、こういう経験から得た強みみたいなものって、誰にでもひとつやふたつありませんか?

例えば「映画観賞が趣味で、友達に面白い映画をよく勧めていました」という人がいるとしたら、少しやり方を変えれば、小説が書けると思いますよ。自分で考えた話を読者にプレゼンするつもりで書き進めていったらどうでしょうか。「ヒーローのこういうところが格好良くてね~」というのを伝えたいなら、ヒロイン視点でそれを語ってもらえば、友達に映画を勧めていた時とやっていることは大きく変わらないはずです。

コンテスト通過のために新しい武器を手に入れる必要はなくて、すでに自分が持っているものを丁寧に磨き上げていくのが、栄冠を手にする一番の近道なのではないでしょうか。……て、なんか偉そうに語っちゃいましたね。ごめんなさい……。

 

――――とんでもないです! 著者さんそれぞれの強みや個性を作品に生かしていただけたら、私も素敵なことだと思います。

山田露子先生

それで、えっと……最後に、ネット小説大賞が大好きってことを、この場を借りてどうしても言いたくて。長くなると思いますが、いいですか?

 

――――ええ! 逆にいいんでしょうか…! 実はこうしたお話を聞く機会ってなかなかないので、とても有難いです(ドキドキ)。

山田露子先生

ネット小説大賞は1万作品以上の応募がある、お祭り騒ぎ的な楽しさが一番の魅力だと思うんですけど……でもそれだけじゃなくて、「作り手を応援しよう」という、さりげない優しさが大好きなんです。

商業作家デビューを夢見ている方にとって、それを成し遂げた人のノウハウをたくさん知ることができれば、そのなかから自分にマッチしたやり方を学べますよね。ネット小説大賞のホームページには、受賞した人の話がたくさん集めてあります。たくさんあれば取捨選択もしやすいので、感性が合わなかった場合でも、「この人の進め方は合わない」というデータを取得できる。

それって、すごく有意義だと思います……!

あと、ネット小説大賞のホームページは作りが洗練されていてすごく好きです。受賞作品の書籍紹介とか、TOPICSの配置とか。情報の出し方が工夫されていて、めちゃ好きなのです!

 

――――あ、ありがとうございます(泣)! たくさんの方の夢が叶う瞬間に立ち会えるので、自然とみんな「応援したい」という気持ちでスタッフをしていると思います。

受賞者インタビューも、皆さんがこんなに惜しみなく、後進の皆様のためにノウハウを教えて頂けていることに心から感謝しています。

これから作家デビューを目指している方々は、ぜひ色々と読んでみて、執筆活動の糧にしていただけると嬉しいです。

 

 

山田露子先生、この度はロングインタビューをありがとうございました! 

12月9日に発売される『ヴェールの聖女 ~醜いと誤解された聖女、イケメン護衛騎士に溺愛される~ 』。ぜひチェックしてくださいね!

 

 

    

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