ワンポイントアドバイス

第10回ネット小説大賞最終選考総評

この度は、株式会社ヒナプロジェクト様の協力のもと、クラウドゲート株式会社が運営する『第10回ネット小説大賞』にご応募・ご参加いただき誠にありがとうございました。
第10回では、13,116作品ものご応募をいただき、その中から、48作品が受賞作品となる運びとなりました。

受賞作品が40作品を超えることは第4回以来となります。
協賛企業様が増えた影響もあるかとは思いますが「受賞にしたい」と思わせる作品が増えていることは間違いありません。

今まで以上に難易度が高く、そして魅力的な作品が集まったコンテストだったと思っております。

【ジャンルについて(ファンタジー)】

今年も多くのご応募をいただいたのが、ファンタジージャンルでした。
前回の総評では『他作品との差別化も意識してほしい』とお伝えしましたが、今回しっかりと意識されている作品が多かった印象です。
『異世界×リボ払い』といった、『パーティ追放』や『ざまぁ』などの王道を押さえつつも新たな切り口から描かれるインパクトのある作品が多かったです。
形式に則ったうえで、自分のフェチズムや特定ジャンル・界隈への情熱を載せた作品は読んでいて面白かったです。

また、選考型のコンテストということで、あまり意識されていないユーザー様も多いとは思いますが、タイトルに気を使うことも、編集者様に強くアピールできる事の1つです。
正直なところ、13,000作品を超える応募作品を編集者様が1人ですべて読むことは難しいです。
たくさんある応募作のなか、タイトルは作者様のセンスをダイレクトに編集者様へアピールできる場所ですので、ぜひタイトルにも気を配ってもらえると、より良い結果が生まれるのではないかと思っております。

ジャンルについて(恋愛作品)

全体の過半数以上が恋愛ジャンルからの受賞となり、過去にない盛り上がりを見せております。
作品自体も、テンプレとなった設定を活用しながら、『一風変わった個性や能力を持つヒロイン』や『一筋縄ではいかない状況設定』など、読者を飽きさせないような工夫をされている作品が目立ちました。
このように書き手としての独自の語り口、物語への切り口を考え、『主人公の思いの強さ』や『主体性を感じさせる物語』が増えてくると、日本の市場だけでなく、世界の市場を意識できると思いますので、ぜひこのまま突き進んでいただけると嬉しいです。

また、商業化を目的としているコンテストということもあり、本来は長く続いている「連載中」の作品を求める企業様が多いのですが、恋愛ジャンルでは「完結済み」の作品が多く受賞されていることを見ますと、お話の結末も重視して選ばれている企業様も多いのかもしれません。

ジャンルについて(文芸作品・その他ジャンル)

昨年と同様に、今年も文芸作品の比率は上がってきている印象でした。
ただ、一般文芸の作品として選出するほどの、突き抜けた設定やキャラクターの面白さなどが見えてこないものも多く、難しいところでした。
一方で、読者に面白さが伝わりづらい作品もあり、書籍化する以上、コアな人だけではなくもっと多くのマスの人間に対して面白いと思ってもらう必要があるので、そのあたりを普段から意識されると、より良い結果になると思っております。

文芸作品については『こういう作品が受賞になりやすい』といった傾向はほとんどありません。
逆に言えば、作風やポイントの如何に左右されずに受賞のチャンスがあるジャンルでもありますので、今後も多くのエントリーをお待ちしております。

コミックシナリオ賞について

今回は初めてwebtoon企業様にもご協賛をいただきましたが、実際に編集者様に選考の具合を聞いたところ『webtoon化すれば人気になりそうかどうかで読んでおりましたが、相対的に総合ポイントが低い作品でも人気になりそうな作品が多くあり、小説家になろうのトレンドと、webtoonのトレンドに違いがあることが発見でした』とのことで、さらに受賞の幅が広がったように思っております。

元々ネット小説大賞はポイントや文字数に関係なく選考を行っておりますが、実際に編集者様からもこのようなお言葉を頂けましたので、ぜひ諦めずに何度でも挑戦してみてください。

また、小説家になろう発のコミックは、市場としてまだまだ成長を続けており、国内をはじめ、国外への展開なども大いに期待できるものと考えております。
コミックからノベライズ化というお話もありますので、ぜひコミックシナリオ賞にも興味を持つ方が増えて頂けると嬉しいです。

セカンドチャンスについて

今回は初の試みで、1度書籍化となったものの、様々な事情から続けることができなかった作品を復活させる『セカンドチャンス』という企画を行っておりました。
実際に150作品以上の応募があり、その中から3作品がコミックシナリオ賞の受賞作品として再スタートを切ることが出来ました。

作品が書籍化された当時はコミカライズの展開が難しかったという作品でも、今であれば行える。
それが、今回の企画で証明できて良かったです。
ご参加いただきまして、本当にありがとうございました。

メディアミックス賞について

メディアミックス賞では、将来的にメディアミックス化への可能性(アニメ化や遊技機化など)を検討するにあたり、『視覚化した際に映える要素を持った作品(バトル要素、キャラクター性)』や『ドラマ性のある作品』を主に置き、選出させて頂きました。
実際に、ご都合主義だけではなく、メリハリのある展開が増えており、とても好印象でした。

今回は奨励賞という形での受賞でしたが、バンダイナムコセブンズ様やバンダイナムコフィルムワークス様とはコンテスト終了後も『選ばれた作品のメディアミックス化の可能性』を検討してまいりますので、引き続きよろしくお願いいたします。

オーディオブック賞について

オーディオブック賞では、「耳で聴く本」と言う観点から、3000文字~5000文字で起承転結が完結している短編作品を中心に各ジャンルで聴きごたえのありそうな作品を幅広く検討しました。
短い話の中でもしっかりとした世界観や個性あるキャラクター性が立った作品が多くあり、選考は難航しました。
本企画の一つの選考ポイントとして同じ世界や舞台を元に色々な話が楽しめる作品集だと数話を音源化しても聞きやすいため、選びやすい基準になるかと思っております。

実際にオーディオブックとなった際には、ぜひ聞いて頂けると嬉しいです。

選考を通しての所感

全体としましては、書籍市場の流行を反映してか、ジャンルを問わず女性主人公(悪役令嬢モノなどなど)の作品が多くございました。ただ、それに比べて男性向けの応募、特にハイファンタジー作品は以前に比べ減った印象もありました。
『小説家になろう』の現在の潮流上、自然とは言えますが、コンテストという仕組みがあるからこそ果敢に挑戦していただきたいという思いもあるところです。

そして、ハイファンタジーの中でも「追放ジャンル」に代わる新たなムーブメントを起こせるようなキャッチ—なテーマの作品が出てくると、非常に面白いと感じておりますので、ぜひ新たな挑戦もお待ちしております。

また、コミカライズを意識する場合は、広告映えするようなインパクトのあるシーンが序盤にあると声をかけやすいと聞いておりますので、そういった画作りの差別化にも意識ある作品が増えていってほしいと感じました。

年々投稿作の文章力が高くなっていると感じておりますので、読者の読みたいものと自身の好きなものをうまく融合し、昇華させた作品を、今後も楽しみにしております。

最後に

第1回が2012年に開催され、気づけば今年で10年目となりました。

ここまで続けてこられたのも、多くの皆様にご参加を頂けたおかげとなります。
本当にありがとうございます!

今後も色々と試行錯誤しながら、
誰もが楽しめるコンテストを続けていきたいと考えておりますので、
引き続きネット小説大賞をよろしくお願いいたします。

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